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ArcheLogos-アルケー・ロゴスー  作者: 色彩模様
ロゴス編 3章 ロゴス・メテオロン Ⅰ

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3章4節.散策


「もーお腹いっぱーい、動けなーい」

 

 ニコニコと幸せそうな笑顔で飲食店【ピーナ】を出た二人は、聖域(イエロ)に保管されている文献や学者との接触を図るべく付近を散策していた。


「だから言ったろ……」


 一度の食事であれだけ食べられては、小説家時代に築いた財も即刻無くなるのではないか。

 それ程までの大喰らいにキュリオスは一抹の不安を抱きながら、周囲に意識を向けた。

 日中というより人通りが多い所と少ない所は、そもそも昼夜関係無く場所で分かれている。

 大きく分けてキュリオス達が入ってきた門のある南西部と聖域のある北東部だ。

 この違いは一目でわかるほどで、南西部で見た若者達は聖域(イエロ)エリア近辺には全くおらず武装警備団体らしき者が巡回している。

 さすがは国家重要文化財の宝庫なだけある。


「君たち見ない顔だね」


 と、都市について整理していると早々にその巡回警備の女性に声を掛けられた。


「若いけど、もしかして若手の研究者かい? それとも……」


 探るように話しかけてきた女性は、マリーゴールドの髪を掻き揚げて見下ろしてくる長身美女。

 しかし女性とは思えないほど鍛え抜かれた上腕筋や三角筋、僧帽筋が見て取れる事から只者でない事はすぐに分かった。

 キュリオスが警戒しつつ言葉を選ぼうとしていると、先に隣のルルディが口走った。


「私達は旅をしてるんです! アルケーについて、眠ったお母さんを目覚めさせるための方法を見つける為に!」


 純粋な強い瞳でしっかりと見つめるルルディにつられ、キュリオスも息を吐き頷いた。

 そんな様子の二人をじっくりと刺す様に見入る長身美女。

 やがて――その鋭い切れ長の目尻は警戒を解いたのかゆっくりと垂れ落ちた。


「そっか~旅人さんだったんだ! めんごめんご~、最近ここら辺で物騒な事が起きちゃっててさ~! お姉さん怖がらせちゃったよね? ごめんね~?」


 屈んで目線を下げると、ルルディを小動物を愛でるように何度も撫でる。

 その口調は声を掛けてきた時とは打って変わって、とてもフランクで若い女性特有の喋り。明るく気さくでいて、とても懐の深そうな声色をしていた。


「そこのお兄さんも、警戒しないで! ほら、握手♪ あーくしゅっ♫」


 掌は小さく、握るとサラサラと絹糸のような肌触りはやはり女性。しかしなまじ鍛えられた腕力だけに、ブンブンと振り回す力が無駄に強い。

 笑いながら手加減しているのだろう力で、キュリオスの身体は激しく上下に揺すられた。


「自己紹介が遅れちゃったね! はじめまして、私はノア・ローレンス。そこら辺をウロチョロしてる警備達のリーダーだよ!」


「初めまして、私はキュリオス。キュリオス・セオリアだ。そしてこっちが」


「ルルディ・フランチェスカって言います!」


 顔見知りだらけの都市で久しく発していなかった()()()()()という言葉に、感動を噛み締めるノア。その肩は軽く震えていたが、照れ隠しなのかルルディを再び撫で回す。

 その力もやはり無駄に強く、しばらくルルディは揉みくちゃにされていた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ノアに連れられロゴス・メテオロンの案内をされることになった二人は、北西部と南東部も見て回ることに。

 北西部は主に輸入品の競りや輸出品の荷作り、北東部では一件もなかった百貨店や専門業者、専売所等々生活を支える中枢エリアとして機能している。

 一方で南東部は人々が暮らす居住エリア、高層の建物が多く最も人通りが多い。二人が泊まった宿はこのエリアの最も南西部に近い場所だったことが、後にノアによって告げられた。

 

「で、君達が入ってきた南西部が若者達の溜まり場。通称【ランプロス】っていう所ね、北西部へと続くとにかく長い大通りがそう呼ばれているの」


 一通りの案内が終わると、再び北東部へ戻ってきた三人。


「そして今いるここが北東部にしてロゴス・メテオロンの宝庫と呼ばれる通称【聖域(イエロ)】。正直文献とか研究とか何一つ分かってないけど、大事な場所ってことだけはわかる!!」


 気が付けば日は傾き、空が茜色に染まろうかという黄昏時。


「今日は本当にありがとうございました。ノアさんのおかげでロゴス・メテオロンの大体の全容が分かった気がします」


 歩き疲れたルルディがキュリオスの背中でスヤスヤと眠る頃、ようやくロゴス・メテオロンでの目的を打ち明けた。


「そこで単刀直入にお伺いします。聖域(イエロ)の文献及び、アルケーの研究者との接触を図りたい」


 キュリオスの言葉にノアの眉が微かに上がった。

 その事に気付かないはずもないが、それでもキュリオスは今取れる最善手を選んだ。

 しばしの間、沈黙が訪れる。

 ――夕刻の日差しが影を伸ばし始める頃、重い静寂の中でノアの口が開いた。


「目的は分かった。んで、やりたい事もよーくわかったよ。その上で言わせてもらうと……私達にその権力は無いんだよね」


 視線を落とし沈む表情。ノアは本気でキュリオス達の力になりたくて、それでも力になれないというもどかしさに深く惜しんでいたのだった。


「私達は守る事が与えられた任務で、依頼主は研究者達ではなくて()()()()()()()()だからさ……」


 互いの間に妙な気まずさが訪れる。


「ご、ごめんね! でもキュリオス達の目的が無事達成されるのは、個人的に祈ってるからさ! もしまた見かけたらそん時に声掛けてよ!」


 気丈に振舞うノアは取り繕った明るさで言い放つと、そそくさと振り返った。

 そしてさよならを言う事もなく逃げるように去っていくのだった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

次回更新26/03/25

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