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ArcheLogos-アルケー・ロゴスー  作者: 色彩模様
ロゴス編 3章 ロゴス・メテオロン Ⅰ

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16/18

3章2節.到着


 空がすっかり暮れ深い濃紺の夜に染まる頃、二人はようやくロゴス・メテオロンへと辿り着いた。

 天を彩る星と月の煌めきは、暗夜を道行かんとする二人の軌跡を見届ける。


「やっと……ついたぁ……きゅりおすぅ、わたしつかれたぁ……」


「あぁ……さすがに疲れたな……」


 意気消沈した二人は、都市入口となる石造りの門を潜り抜けて少し彷徨う。

 すると程なくして大通りへと出た。

 外観はとっくに闇に染まり、見る事こそ叶わなかったが、内に入ってしまえば景色は一辺。一定の間隔で綺麗に建てられた街灯と建物。そして陽気に飲み比べをする若者達。

 活気の良さと初めて見る大都市の光景に、二人は眼を見開いた。


「す、すごおおおい! すっごいよキュリオス! 夜なのに全然暗くない!!」


 はしゃぐほどの元気は残っていないが、初めて見る大都市の日常はルルディにとっての非日常。

 その華やかさに魅せられ、気付けば生気が戻るほどの興奮を示した。


「だな、ただ疲労の方が大き過ぎる……今夜は大人しくすぐ宿で休もう」


 さんせー、と前のめりになって歩くルルディはもう瞼が重くなっている。

 それもそのはずウィンズ町からロゴス・メテオロンまで、距離にして約10里になる。

 大人の足でも厳しいというのに、少女の足でよく歩ききったとキュリオスは内心感嘆していた。

 若者達が沿道に座り込んでは酒を飲み、仲間達と肩を組んでは大声を上げる。

 その姿を尻目に二人は中心街へと向かうのだった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 若者達の溜まり場、メガロ・メテオロン南西部に建ち並ぶ飲み屋街では、喧騒絶えぬ日々が今日も訪れている。


「ソフィー、お前も飲めよ。結構キツくていい酒だぞ」


 ソフィーはフードを目深に被ったまま、店の最奥から動くことはない。

 イスの背もたれに体重を預けると、咥え煙草の隙間からゆらゆらと煙を吐き出した。


「俺ぁ……酒よりメス(・・)のが好きだ」


 エッジの効いた低音が小さく漏れる。


「んふっ♪ それってぇ、わたしのことぉ?」


 近くに座る女性が艶やかな声で擦り寄ると、そのまま胸元へと身を預けた。

 その様に取り巻きの男達は羨望の眼差しを向け、また女達も女性に対し嫉妬心を剥き出しにする。

 

「あぁ……? あぁ……そっちのメス(・・)も好きだな」


 しばし考え込んだソフィーの口角がねっとりと上がる。そして自身の胸元で頬擦りする女性の顔を引き寄せると、舐るように唇を奪った。

 濃厚で熱い舌の絡み合い、唾液を含んだ艶めかしい音と漏れる喘ぎに店中の視線が一気に釘付けになる。


「んあっ、そひぃ……しゅきぃ、っんぷ、ちゅぷっ……」


 女性は火照り熱くなった舌で、何度もソフィーの口腔を味わう。 

 敏感な舌裏を意地悪くなじってやると、女性は嬌声を上げて甘く優しい絶頂を迎えた。

 肩、背中、腰とガクガクと小刻みに震える姿がその場の全員に晒され、濃密で背徳的な空間を作り出す。


「いっ、くふぁっ! ……はぁ、はぁ……そふぃ……そふぃすきぃ」

 

 力一杯ギュッと抱き着き再び顔を埋めた女性は、照れ臭そうにソフィーの名を呼ぶ。

 二人だけの世界に引き込まれた住人達がゴクッと生唾を飲み込むと、程なくしてソフィーは優しく諭し始めた。


「このロゴスには2種類の人間がいる。俺達のように毎日明日生きることだけを考えるゴミと、そのゴミを生物と定義すらしない頭の固い学者連中だ」


 ゆっくりと立ち上がると、一同の視線もその姿を追っていく。


「ならば、一度認識させてやるべきだと思わないか? ゴミはゴミなりに生きている人間なんだと……明日を生きる為に、今日を生きる人間なのだと!!」


――うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!


 ソフィーの言葉に歓声が沸く中、フードの奥から覗く鋭い眼光。

 その瞳には強い憎しみと怒りの炎が宿っていた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「二部屋空いてるけど、どうするんだい?」


 宿屋を見つけた二人は、店主に部屋数をどうするか尋ねられていた。

 

「もちろん二部屋で頼む」


 いくら旅中で節約をしなければいけないとはいえ、ルルディは年頃の少女だ。男女同室なんてのはあり得ない。

 当然のように二部屋を願い出たキュリオスだったが、服の裾を引っ張られてルルディに視線を向ける。

 すると、今にも泣き出しそうな顔で同室を望むルルディが見つめていた。


「っぐす、きゅりおすぅ……ひとりこわい……くらいのやぁ、いっしょがいい」


 啞然とするキュリオスは少し目を丸くすると、ルルディの頭を優しく撫でてやった。

 アグロスでの一件がトラウマになっていないか心配になったキュリオスは、少しルルディの様子を窺うと――。


「店主、やっぱり一部屋で頼む」


 親子のようなやり取りに、店主も納得の笑みを浮かべた。

 その日歩き疲れたルルディは、キュリオスの腕にしっかりと引っ付く。

 決して離すものかと抱き締める力は、すーすーと心地よい寝息が聞こえてくるまで緩むことはなかった。


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