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2.

 馬車が止まり、ドアが開くなりセリーナは馬車のステップから飛んだ。大きく伸びをすると不躾な視線を感じる。


 あら?トラス公爵家の馬車なのに

 アーサー様ではないわ

 銀髪…ミリーナさま…ではない?

 トラス公爵家の方々は青髪では…

 ほら、あれ、双子のハズレの

 ああ、セリーナ様

 魔力がまるでないのに入学なんて


 ヒソヒソと聞こえる声を背にセリーナはステップのセットの終わった馬車へと手を伸ばす、と、タコのある角ばってきたその手の上にたおやかな淑女の手が乗る。

 フワリフワリとステップを降りてきたミリーナに周りの声が止まり、ほぅっと熱い息が聞こえる。


 あれがお噂のミリーナ様

 見事な青い髪ですわ

 お美しいミリーナ様

 今年のトップ入学はミリーナ様らしい

 当然よね

 やはり王子妃に相応しい

 まだ婚約者が決まっていないなんて

 一度でいいからお話ししたい


「相変わらずモテモテだね」

「ふふ、嫉妬してくれるかしら?」

「嫉妬してもいい栄誉をくれるの?」

「どうしようかしら」

 ふふ、と笑い合う双子の間にアーサーは麗しい笑顔で入る。

「ほら、周りの人たちが戸惑っているよ。笑いかけてあげて」


 アーサーは周りに聞こえるよく通る声で話す。

「セリーナ、可愛い妹よ。君もトラス公爵家の一員だということを忘れずに」

 その言葉を聞き周りにいる人達が気まずそうな顔で目を逸らす。

 セリーナは目を瞬かせて兄を見る。トラス公爵家の一員、その言葉にセリーナは言葉遣いを改める。

「もちろんですわ、お兄様」

「本当にわかってるかい?君が何かを言われたらトラス公爵家から話を通すから忘れずに」

 ふふ、とセリーナは笑う。

「もちろんわかっております。何かありましたらご相談しますわ」

 スカートの裾をつまみ頭を下げる。

「それじゃ、頑張ってね。2人とも」

 アーサーは手を振って爽やかな笑みを浮かべると踵を返して教室へと向かった。


「新入生代表、サクラ・ハマル」

「はいっ!」

 入学式の新入生代表はなんとミリーナではなかった。

「なんで?」

 セリーナが首を傾けるとミリーナは

「お父様がお断りしたそうよ。『家には娘が2人おりますが、まさかそのうちの1人を指定する気ではないですよね?』ですって」

 入学式代表は名誉なことなのに、流石にセリーナのココロが軋んだ。小さな声で呟く。

「ミリーナは…よかったの」

 ミリーナジロリとセリーナを睨むと、またしっかりと前を向いて小さな声で言う。

「次にその質問したら今一番お気に入りの魔法、セリーナにぶっ放しますわ」

 セリーナはまるで魔法を放たれたような顔をして、前を見たままへらりと笑った。

「それは恐い。もう言わないよ」

「よろしいですわ」

 しばらく壇上の見知らぬピンク髪を2人して見つめた。爽やかな少し高めの声が講堂に響く。

 目を細めてセリーナがところで、と口を開いた。

「なんで食の公爵家のブレッドが代表じゃないんだろ」

「やるメリットがなかったからじゃないかしら?」

 どうなの?とミリーナがセリーナの反対側に目を向けると少年が肩を少し上げる。

「ま、それもあるんだけどね」

 セリーナの反対側にいた12歳という年齢の割に背の高く平均的に筋肉のついた美丈夫が答える。ちなみに見事な小麦色の髪の毛である。よ、久しぶり、と小声で挨拶してくる。

「ウチの親と学園長が仲が悪くてさ」

「「なるほど」ですわ」

 そんなこんなでピンク髪が自慢げに壇上からぐるりと体育館を見て降りていった。


 一日目の座学については特に特筆すべきこともなく。

 教室に入り60名ほどの生徒たちと試験を受けた。

 貴族6割平民4割。

 試験管がスタート、という合図を出すと共に紙をめくる音、カリカリ書く音が響いた。


「どうでした?」

「案外面白そうな人がいるな」

「同意ですが、試験の出来です」

 それなら、とセリーナはにひっと笑う。

「ミリーナと同じくらいできたよ」

「では問題ないですね」


 と一日目は終わった。

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