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1.

 ハーランド王国は魔法至上主義だ。市民でも広く魔法が使える、そんな国なので当然である。王家や貴族たちは国の中でも魔力が強く、強い魔力はステータスである。

 そんな中で有名なのはトラス公爵家の双子の次女、ミリーナである。

 なにせミリーナはただでさえ1人分の魔力の多い、魔のトラス公爵家の生まれである上に2人分の魔力を持っているのだ。

 そう、2人分。

 双子の姉のセリーナも反対の意味で有名である。

 あのトラス公爵家の生まれなのに魔力がカケラもない。

 物語はそんな2人が12歳となり王立学園に入園するところである。



「セリーナ!」

 びくりと紫ベースの制服を着て、ザックを背負った背中が揺れる。

「今馬車が来るわよ?」

 ゆっくりと振り向くと同じ紫ベースの制服を着た抜けるような白い肌、深く吸い込まれそうな青色の髪の、静かに微笑む美少女がいる。双子なのに、12歳なのにどことなくツヤっぽい。同じ顔なのに、なんだかずるい、とセリーナは唇を尖らせる。

「…走って行こうかと…」

「一緒に行きましょう」

 圧がすごい。

 こうなったらセリーナのささやかな主張が通ることはほぼない。でも『ほぼ』なのでセリーナは再度チャレンジしてみる。

「…走って行くの、駄目?」

 もう何年も馬車なんか使っていなかったからお尻はモゾモゾするし、何より体力作りのために走っていきたい。

 そんな思いを込めて上目遣いでミリーナを見るが、ミリーナは口に手を当ててふふふと笑う。

「一緒に馬車で行きますよ?」

 ガックリと項垂れたところで、ははは、と爽やかな笑い声と共にさっぱりとした青髪の目の醒めるような美形が階段から降りてくる。コチラは灰色の制服だ。

「お兄様」

「兄さん」

 この家の人はイチイチ顔がいい、とセリーナは顔を歪める。そんなセリーナを面白そうに見やり兄、アーサーは背中をポン、と叩く。

「ミリーナに見つかった以上セリーナの負けだ。諦めて僕たちと一緒に馬車で行くよ。久しぶりだし、最初が肝心だよ」

 ほらほら、と背中を押すミリーナと明らかに面白がっているアーサーに苦虫を噛み潰したような顔でセリーナは馬車に乗り込んだ。


「だいたいさ、貴族は全員王立学園に通う、とか意味わからないよね」

「そう?」

「だって貴族なんてだいたい家庭教師ついてるし」

 ぶー、と口を尖らせるセリーナにアーサーは呆れ顔をし、ミリーナはまたクスクスと笑う。

「武の公爵家とかあるのに、魔法必須なのもいただけないよ」

「まぁ武の公爵家とはいえ、魔法はあるし使えるしね」


「今日は入学式の後と明日は新入生はクラス決めだっけ?」

「ふんふん」

「一日目は座学で二日目が魔力検査ですわ」

「へーそうなんだ」

 呑気な声を出したセリーナを2人はジトッと見る。

「え、いや。だってさ、無理じゃない?座学はともかく魔力検査。私、魔法なんて持ってないし。最下位クラスに決まってるよ」

「わたくしはそう思いませんわ」

「僕もね」

「えー、いつだったかみたいに丸いアレに手をかざして光の大きさを見るんじゃないの?」

 アレ…魔石を利用して作った魔力測定装置。魔力なんてカケラも持っていないセリーナは完全にアウトだ。チラリとも光らなかった思い出に苦い顔になる。

「それもあるけどね、それだけじゃないんだよ」

「それだけで一日も潰れませんわ」

「?」

「どれだけ魔法を上手に使えるか」

「どれだけ上手に攻撃ができるか…ふふ、セリーナは得意そうですね」

 楽しそうに笑うミリーナに魔法を使えないけど?と思ったがセリーナは曖昧に微笑んだ。


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