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第6話 収穫祭②


「お!奇遇だね!」

「あ、イーリスさん、どうも」


 注文が被った相手を見るとイーリスだった

 イーリスはBランクだから討伐大会には出られないはずだがなぜここに?


「観光ですか?」

「半分観光で半分は依頼!」

「依頼?」

「そ!討伐大会の警備依頼!」


 イーリス曰く討伐大会で名を残そうと無茶をする冒険者は多いらしい

 警備隊として沼地を巡回しながらそう言った冒険者を助ける依頼だそうだ


「冒険者になりたての人ほど体力や魔力が回復しきらないことに気付かず無茶しちゃうんだよね

 討伐数稼ぎたい気持ちもわかるけど、5日間あるんだからどこかで1日休みを取ること!

 これは先輩としてのアドバイス!」

「休日か・・・・

 確かに考えていなかったです」

「そそ!私のおすすめは3日目か4日目かな!

 後半になるほど1日の討伐数が増えるから最終日に体力を残しておくといいよ!」


 沼地を5つの区間に分割し、5日間かけて討伐大会を実施する

 追い込み漁の要領で沼地の奥に向かって討伐エリアが移動していくため、日程の後半はマッドトードの密度が上がり全体の討伐数が増える傾向にあるそうだ


「へい、お待ち!」

「あ、支払いは一緒で」

「はいよ!」

「・・・・ん?」


 シレっとお会計をイーリスに押し付け屋台のおじさんから串焼きを受け取る

 4本をミリアに渡し1本は俺がいただく


「ねぇ今・・・・「んっ!うまい!」


 柔らかくさっぱりとした肉感に甘辛いタレがよく合う

 名物というだけある

 ミリアも両手に2本ずつ持って嬉しそうに頬張っている


 イーリスはミリアの串焼きと自分の串焼きを見比べた後、ミリアの胸を凝視している

 そして何か衝撃を受けたような顔をした


 顔の表情がコロコロ変わって面白い人だ

 そして何を考えてるか大体わかるのが何とも言えない


「おじさん!串焼き2本追加で!!」

「まいど!」


 その後イーリスと一緒に屋台を何件か回ったが、どの屋台でもミリアと競うように注文していた

 もちろん会計はすべてイーリス持ちだ

 イーリスは休憩が終わると言って沼地に戻っていったが体が重そうだ


「俺たちもそろそろ戻ろうか」

「・・・・うん!」


 屋台飯を堪能したミリアは活力にあふれている

 この調子で後半も頑張ろう



 初日が終了し、中央の広場に20位までのランキングが張り出される

 掲示板の前には多くの冒険者と観光客が集まっている

 1位は23ポイントで白銀の大鎌(シルバー・サイス)だったようだ


 俺たちは8ポイント

 もちろんランキング圏外だ

 20位のパーティでも12ポイントを獲得している

 ランキングとかどうでもよかったが、こうして数字に表れるとなんか悔しい・・・・!


 2日目は初日とは異なる討伐エリアへ向かう

 2日目も順調に討伐ポイントを稼いでいたところ事件は起こった


「ラージトードだ!」


 離れたところで巨大なカエルの魔物が咆哮を上げていた

 ラージトードはマッドトードの上位種である

 高さ3メートルはあろうかという巨体のためこの距離でも様子がよくわかる

 すでにどこかのパーティが応戦しているようで、ラージトードが暴れている


「Eランク以下の冒険者は近づかないように!

 すでに警備隊も到着してるので安心してください!」


 イーリスと同じ依頼を受けてる人かな?

 警備隊と思わしき人が周囲に声をかけて回っていた


「今年はもうラージトード出たのか!」

「俺たちも可能性あるぞ!」


 ラージトードの討伐ランクはDランクのため、Cランク冒険者がいるパーティは余裕をもって討伐できる

 上位種ラージトードは大量ポイント獲得のチャンスのため、狙っている冒険者は多い


 自分たちの作業に戻ってマッドトードを討伐していると歓声と地響きが聞こえた

 無事ラージトードが討伐されたようだ



 夜になると酒を提供する屋台が増え、より一層騒がしくなる

 等間隔に置かれた松明がテント群を照らしており、街とはまた違った雰囲気が楽しめるため観光客も多い


少し離れれば月明りのみが照らす薄暗い草原

目を凝らさなければ見えない暗闇は怪しい者たちの密会には好都合だ


「これが例の薬品です

 飲むことで筋力、魔力を一時的に向上させます

 皆様《冒険者》にわかりやすく言うと、実力が2ランクほど上がると思っていただいて構いません

 効果が切れると反動で数日は動けなくなりますが、死地を乗り切れると思えば安いものでしょう?」


フードをかぶった男が怪しい液体の入った小瓶を手渡す


「2ランクも!?」

「俺たちならBランクレベルになれるってことか・・・・!」


小瓶を受け取った冒険者風の男たちは信じられないといった顔で小瓶の中身を見つめる


「本当に安全なんだろうな?」

「ええ、Dランクの実力があれば問題なく使えることは実証済みです」

「効果時間は?」

「3分ほどでしょうか

 用法容量はくれぐれも守ってくださいね」

「ああ」

「それでは、私はこれで」


フードをかぶった男はそういうと音もなく闇に紛れて消えた


「覚えとけよ・・・・俺たちに恥をかかせたことを後悔させてやる・・・・!」



 3日目は大きな事件もなく終えた

 イーリスの言っていた通り、日程が進むにつれて1日の討伐数は全体的に増えている


 3日目終了時点でのランキングは相変わらず白銀の大鎌(シルバーサイス)が1位だ

 ポイントは109ポイント獲得しており、2位のポイントは101ポイントとなかなか接戦だ

 俺たちのポイントは58ポイントとランキングにはかすりもしない


 俺とミリアは4日目を休息日にすることとした

 討伐数が最も稼ぎやすい最終日を万全の状態で迎えるためだ


 4日目は討伐数が0となるが仕方ない

 人数が多いパーティは順番に休むことで毎日討伐数を積み上げている


 ミリアには魔力回復薬を飲んでもらい、最終日に備える

 魔力回復薬とは、常時放出している魔力を抑えることで魔力の回復を促進する薬品だ

 効果期間中は魔法が使えないが、通常時の倍以上の速度で魔力を回復できる

 まさに休養日にぴったりの薬品だ


「今日は祭りを楽しむよ!」

「・・・・うん!」

「とりあえずいろんな屋台を巡ってみよう」


 マッドトードの討伐に出ていると落ち着いて屋台を回れなかったため、休息日とした今日は祭りを満喫することにした


 午前中はスケリーの街へ行き、食べ歩きや買い物を楽しんだ

 広場では大道芸をやっていたり、イベントが行われていた

 飛び入りで参加した大食い大会ではミリアが他を圧倒し、優勝した

 ミリアはまだ物足りなそうな顔をしていたのを見逃さなかった


 午後からは沼地に戻り、ここでも食べ歩いた

 観光客向けに売られている雑貨を見て回ったり、 沼地が見張らせる高台からマッドトード狩りを見学した


「ふむ、今年は粒ぞろいじゃが華がないな」

「悪くはないが、やはり黄金世代には及ぬ」

「いやいや、三英傑が過去最高じゃよ」

「三英傑でも唯一王の足元にも及ばないとあれほど―――


 下馬評が書かれた紙を握りしめたおじさんたちの議論が白熱していた

 いろいろな楽しみ方があるんだなぁ


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