表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/16

第3話 初めての依頼とお約束


 冒険者のランクは Dランクで一人前、Cランクでベテランと言われている

 CランクとDランクの間には大きな壁が存在しており、Dランクで停滞する冒険者も少なくない

 Dランクでも生活には困らない額を稼げるため、惰性で冒険者を続けている人も多い


 Cランクの昇格試験を受けるための条件は3つ

 1.ギルド職員の推薦を受けること

 2.Dランク以上の依頼を20個達成すること

 3.Cランク以上の魔物を5体以上倒すこと


 これらの条件はパーティで達成しても有効となる

 スケリーの街に着いた翌日、俺たちは昇格試験の条件を満たすために依頼を受けていた

 今いるのはチコの森

 スケリーの街から半日ほど移動した場所にある


 生息している魔物のランクはそこまで高くなく、Dランク以下がほとんどだそうだ

 たまに現れる上位種がCランクほどあるが、上位種が現れるのは稀なため駆け出しから中級者までの冒険者がよく訪れる場所だ


「初めて来る場所()だけどどう?」


 ミリアは耳を澄ませ、()()()()を聴く


「・・・・大丈夫、いつもどおり」

「よかった」

「・・・・向こうの方にいそう」


 エルフの能力に問題はないようだ

 今回俺たちが受けた依頼はDランクの魔物であるレストボアの討伐だ


 繁殖力が高く、大抵の森に生息している

 猪型の魔物で体が大きいうえに、肉がうまい

 食料としての需要があるため、いつでも納品依頼が出ている

 市場に出回っている肉の半分がボア系統の肉だとニーナさんが言っていた


 ミリアの言う通りに森の奥に入っていくと目当てのレストボアを見つけた

 体長3メートル、高さ2メートルほどでなかなかいい大きさだ

 鼻の両脇から生えた巨大な牙は俺の身体と同じくらいかそれ以上だ

 あの牙で致命傷を負う冒険者も多いらしい


 気づかれないように様子を伺う


「周囲に他の魔物は?」

「・・・・いなさそう」

「いいね、あいつにしよう」


 森の中では周囲に気を配ることも大切だ

 狙った魔物に集中して気づいたら魔物に周りを囲まれていましたなんてこともある


 レストボアは木の根を掘るのに必死でこっちには気づいてないようだ


「よし、いつも通り行こう」

「・・・・うん」


 俺はユニークスキルの【魔力変換】で身体能力を上げ、ミリアは【並列魔法】で魔法の準備をする

 このまま気づかれずミリアの魔法で終われば楽だったがそうはいかない


 魔物は魔力の流れに敏感で、それはレストボアも例に漏れない

 魔力の変化を感じとりこちらに気づいたようだ

 そもそも魔法打つときに発現する魔法陣はすごく目立つからまぁ気づくよな


 レストボアはすぐさま体制を整えると足場を数回(なら)してこちらに突進してきた

 ミリアの時間を稼ぐため俺もレストボアに向かっていく


「グアァァァ!!!!」

「ふん!!!」


 俺は正面からレストボアの両牙を両手で掴み踏み留まる

 行き場を失ったお互いの力は陥没という形で地面に吸収された


 レストボアは四本足で必死に押し込もうとするがこちらも負けられない

 自分より圧倒的に小さな生き物に止められたことに驚いたのか、レストボアは小さくひと鳴きした


「なーめーんーなーよっ!」


 レストボアの鼻先に頭突きを見舞ってから、顔を地面に叩きつけ体制を崩す

 一旦距離を取るため、後退する


「・・・・ロックブラスト!」


 後ろから聞き慣れた声が聞こえた直後、俺の真横をレストボアの牙サイズの岩が通り過ぎていく

 ミリアの放った岩魔法は体制を立て直したレストボアの眉間に直撃し、再び態勢を大きく崩した

 ミリアの攻撃は終わらない

 レストボアの足元にはもうひとつの魔法陣

 【並列魔法】を駆使して2つ目の魔法を放った


「・・・・ロックエッジ!」


 地面からレストボアの喉元に向けて棘が地面から生えてくる

 俺はそれに合わせて上に跳び、ミリアの初撃の傷が残る眉間に拳を振り下ろす


 衝撃とともに骨が砕ける感触が腕に伝わる

 上下からの挟み撃ちにあったレストボアは断末魔を上げる間も無く崩れ落ちた


「ナイス!」

「・・・・うん!」


 動かなくなったことを確認しお互い讃えあう

 振り返りサムズアップするとミリアも笑顔で返してくれた


 レストボアを解体し、ミリアの空間魔法に入れる

 今回の依頼達成に十分な量を確保できた

 が、次に依頼を見つけたときすぐに達成できるよう、もう1頭くらい狩っておきたい


 レストボアの依頼があればすぐに納品できるし、余っても自分達の食糧になる


「・・・・あっち」

「了解!」


 ミリアの案内で森を散策する



 2頭目のレストボアも無事倒し、素材を回収した

 休息するのに丁度良い場所を探し、そこで昼食をとることにした


「うまい!」

「・・・・うん!」


 狩りたて新鮮な肉を焼き、軽く塩を振るだけでも十分美味しかった

 華奢に見えて大食漢のミリアはレストボアの足1本を丸ごと食べている

 これだけ食べても華奢なのは食べた栄養がすべて一か所()に集中しているからだと思う


「・・・・っむ、魔法はエネルギーを多く消費するの!」


 心を読まれた

 とりあえず愛想笑いで誤魔化す


 ミリアは少しむっとしたが、直後には幸せそうに肉を食べている

 切り替えの早いことで


 ミリアの食べる姿を見ながら、この後どうするか考えてるときだった


「おうおう、美味そうなもん食ってるねぇ」


 数人の冒険者らしき男たちが現れた

 知り合いではないし何の用だろうか


「お前ら、昨日冒険者登録してた新人だろ?」

「ええ、まぁ」

「俺ら全員Dランク冒険者なんだが、ちょうどお前らを探してたんだよ」

「はぁ、何の用でしょう」


 ニタニタと不快な笑みを浮かべているのを見るとあまりいい用事じゃなさそうだ


「一度しか言わねぇからよく聞け

 金目の物置いてとっとと失せな」


 予想通りの返答をありがとう

 冒険者登録したばかりの俺達を狙ってわざわざここまで来たのか


 前列にいる剣を下げた3人は装備や身体つきからして剣士だろう

 後ろの方にいる弓を持った男とローブを着た男はスカウトと魔法使いだろうか

 バランスが良いパーティと言える


「お前ら、マスター室に呼ばれてたよな?

 てことはどこかの貴族のボンボンなんだろ?」

「隠しても無駄だぜ

 持ってるもん出しな」


 なるほど、俺たちを貴族の子息と勘違いしてるのか

 が、当てが外れたな

 ミリアを庇うように移動する

 何も持ってないことが分かれば大人しく退いてくれること願って口を開く


「わざわざ俺たちのためにここまで足を運んでもらうなんて、ご苦労様です

 残念ながら俺たちは貴族ではありませんし、見ての通り大したものは持ってません

 あなたたちの期待にこたえることは出来なさそうです」


 実際、荷物は全部ミリアの空間魔法にしまってある

 空間魔法は希少らしいし気づかれないことを祈ろう


「こいつらほんとに食い物くらいしかないぞ?装備もしてないし」

「バカ、どこかに隠してんだろ」

「は?なんで?」

「知るか!丸腰でこの森にいるわけないだろ!」

「金も隠し持ってるかもしれねぇ」

「何もなきゃ女をもらえばいいだろ」

「ほーよく見たら上玉じゃねえか」

「へへへ、おい、気が変わった、女も置いてけ」


 ミリアは不快な視線にフードを被った

 危害を加えるつもりならこちらも下手に出る必要はない

 ましてやミリアに手を出そうとするなら容赦はしない


 油断しきった態度、隙だらけな立ち振る舞い、前衛と後衛が横に並んで陣形もなにもない

 こちらの動きを誘うブラフである可能性も低そうだ

 逃げる必要はないな


 密かに【魔力変換】を使って身体能力を上げておく

 

「あ?なんだその目は?

 自分の立場をわかっていないようだな」

「いいからさっさと失せろ

 今なら命だけは助けてやるからよ」


 剣士の男たちは腰に下げた剣を抜いた

 後衛の2人は腕を組んでニタニタしている


「失せる気がないなら、死ね!!!」


 先頭の男が一歩踏み出したときだった

 男たちの足元に魔法陣が現れた

 突然のことに男たちの動きが止まる


 俺は振り向きミリアに確認するが違うと首を振った

 急いでミリアを抱え距離を取る

 身体強化しといてよかった


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ