表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花美哉  作者: ハミル
2032年
9/39

花美哉 ⑨ GI スプリンターズS

小学校教師のポニテは今日も競馬場に来ていた

スプリンターズSに合わせて中山まで行きたかった

名古屋の公立校の教師にはそんな遠征費用は捻出できる余裕はなく、裏開催の中京競馬場のスクリーンを見つめていた


挿絵(By みてみん)


GⅠ スプリンターズS

馬券は3歳馬のオチョーの単勝を5,000円購入した

オッズは12倍前後を揺れ動いていたから31歳の公務員としては、的中すれば生活の足しになるし、少しばかり贅沢なディナーなんかを想像しながら中京10Rの外れ馬券を握りつぶした


「メインで当てればいいんだ」


負けが混んでいる馬券師の、希望の言葉を呟いた

同様のセリフを隣りのオッサンが呻いた


2032年となった今では、国内競馬において騸馬の存在はかなり少なくなっていて、オープンまで出世、G1の出走まで漕ぎつけたオチョーは稀有な存在だった

気性の悪さは御する範囲を超えていて、振り落とされた調教助手やジョッキーは数えきれなかった

元々能力は高かったが、レースでは暴走を繰り返した

未勝利のまま、3歳のきさらぎ賞の日に虚勢手術をメスした

捲土重来

G Iまでピラミッドを登った


挿絵(By みてみん)


発走を告げるファンファーレが響く


勢いよく飛び出した17頭

内枠から弾け飛んだフトシコツーが先頭に立つ

オチョーは少し立ち遅れたが二の足が効いて、中段につけた


フトシコツーの鞍上レイミが手綱をしごく

天才肌のジョッキーは大胆な騎乗で人気を博していた

向こう正面に入ったところで3馬身はリードしたか

レイミは手綱を揺り動かしながら一定のリズムを刻む

3コーナーに掛かったころには、

スプリント戦の大逃げを見た


3コーナーを回りながら

懸命に鞭を入れるプレイ

応えるオチョー

末脚は伸びている


止まれ止まれ!


3馬身差の完敗 2着だった


勝ったのはフトシコツー5歳牝馬だった

前走のGⅡセントウルSを鮮やかに差し切ったフトシコツーが大逃げを決めた


挿絵(By みてみん)


オチョーと騎手のプレイを迎えた調教師のエイチは、騎手と握手をして、馬のほほを撫でた


挿絵(By みてみん)


ポニテは束ねたポニテールをバラした

負けた日はポニテールを解いて、心を放牧させる


「凱旋門で取り返す」


一週間後に迫ったパリで取り返す


「JDCで取り返す」


隣りのオッサンが叫ぶ

今週水曜日に開催されるジャパンダートクラシックに照準を絞った


ポニテが笑った

オッサンも笑った


しばらくレースの講釈を論じて


連絡先を交換した


ポニテは名前を聞いたが、

オッサンでいい

オッサンがいいと言うから

少し申し訳ない気持ちで、スマートフォンの連絡先にオッサンと入力した

メッセージアプリは使ったことがないから、メールで頼むと言う


久々にメールを立ち上げて"よろしくお願いします"とだけ入力して送信を押した


挿絵(By みてみん)


凱旋門賞には3歳牡馬タッタラーが出走を予定している

皐月賞、ダービーともに2着

3歳で挑んだ宝塚記念は3着だった

放牧を挟んで8月下旬にはフランスに乗り込んで、乗り込んできた

ぶっつけは予定通りのプランだから、あとは出たとこ勝負だ

前売り5番人気で現地の評判も上々だ


挿絵(By みてみん)


Jpn1 JDCは2冠馬アゲハが大本命だ

ハミル牧場の生産馬ヒメヒコがレパードS2着で優先出走権は得られなかったが、収得賞金で何とか出走枠を確保した


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


・・・・


挿絵(By みてみん)


ハミル牧場で花美哉は

乗り込みを開始していた

来年には2歳になり、デビューする


挿絵(By みてみん)


フトシコツーはスプリンターズSのあとはマイルCSへの参戦は既に発表されていて

オチョーも気性が改善された今なら、マイルもこなせる筈だ

調教師エイチの腹は決まっていた


挿絵(By みてみん)


乗り込みを終えた花美哉を

唯一の牧場スタッフのマメドが

愛撫した


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ