殺し屋マーガレット
手紙を郵便屋に渡して一週間たった。
そして今日、返事が来る頃で、昼に郵便屋が来たので、ミハエルからの返事を見ると、そこに書かれている内容は、辛辣なものだ。
曰く、旅を一緒にした仲間になんの断りも言わず、去った貴方に、力を貸すのは、常識的にありえない。
貴方の抱えてる問題は、ご自身で解決してくださいとの事だった。
まあ……予想よりもかなり怒っているな。
それと、やはり、ガーネットの遺品の宝石は渡せないよな、俺もどうかしてたよ。
ミハエルもそんな俺の軽薄な行動に怒っている感じはする。
しかし、どうするか…ロベルトの母親については、俺も回復魔法は使えるが、専門じゃないからな。
俺は悩んでいると、ロベルトが庭で魔法を披露している。
水の中級魔法、怒れる水の飛沫を放っていた。
アランは主人の成長ぶりに、歓喜の声を上げている。
大した奴だ、この一週間でここまで、魔法を使いこなすとは、天才という奴か、俺が教えることも、もう無いだろうし、あとは、ロベルトの環境を少しでも良くして、それから…それから…どうしようか…。
まあ、そんな事は、物事を解決してから考えればいい、あと、この一週間で、ロベルトの父親アーロンについて、どうも違和感を感じる。
奴は、正妻であるメアリー、息子のジョン、娘のサーシャに体裁的には、愛情深く接しているようだが…ロベルトに対しての接し方とも、何か違う。
奴は、跡取りをロベルトにする腹づもりなんだろうが、それが、凄く打算じみているように見えるんだ。
俺は、この屋敷に泊めて貰っている客人として、言ってはあれだが、アーロンが気に食わない。
そんな事を考えながら、夜になる。
なにか異様な気配を感じる…よく研ぎ澄まされた殺気だ。
大抵の者なら、見過すだろうが、仮にも勇者である俺には、この手の殺気を感知を見逃さないぞ。
さて…何処にいる。
屋敷の借りてる部屋から、出て、廊下を見ると人影が見える。
人影は、何やら部屋に入ろうとしている。
あの部屋は、ロベルトだ。
俺は、人影に気付かれる前に、体術の一種、瞬歩で一気に間合いを詰めると、剣を抜き、剣の切っ先を突きつける。
「おやぁ、貴方様は勇者様ではありませんか」
「お前はマーガレット!?」
勇者として旅をしていた時、幾度も、俺の命を狙ってきた、殺し屋マーガレット、金であれば、善人、悪人とも見境無しに殺しを行うA級の殺し屋だ。
真っ赤なコートにフードを被っているが、フードからチラリと見える、漆黒の髪にオッドアイの目、彼女とは幾度も剣を交え撃退してきたが、まだ、こんな稼業に手を出しているとは、人間そうそう変われるものではないな。
マーガレットと最後にあったのは、旅の終盤、最後の町で宿屋で襲われて、殺さず、町の兵士に突き出して、牢屋行きになってからは、会わず、俺は法の裁きによって無期懲役の刑務所暮らしになったとばかりと思ってたが、この女、脱走してたんだな。
「マーガレット、俺も今度は容赦しないぞ」
「あれれー、勇者様がこんな場所で何をしてるんですか〜」
「お前に話す事などない、このまま、首を刎ねてもいいんだぞ、生き延びたかったら、質問に答えろ」
俺はマーガレットに質問したのは、誰の差し金か、いくらで仕事を請け負ったのか、そして、脱走を手助けしたのは、誰だという質問を投げかける。
誰の差し金っと言っても、依頼者を特定されずに、済む為に一次、二次、三次請け負いで、マネーロンダリングならぬ、情報ロンダリングで誤魔化してる可能性がある、いや、この女なら、そんなまどろっこしい事をせずに、一次請け負いで、大金をせしむだろう、だから、いくらで仕事を請け負ったと聞いている。
あと、この女の脱走を手助けしたのは、誰なのだろうか、そこも知りたかった。
すると…
「勇者様たっら〜、質問多いですね〜、まあ、答えましょう、先ずは依頼者はですね〜、匿名で分からないんですよね〜、おおっと! そんなに殺気を出さないで下さいよ〜、今、私は殺し屋集団ジュエルに所属してるんです、其処で、金貨百枚で仕事を頼まれたんですよね、あと、脱走も組織が手伝ってくれました」
組織絡みか…厄介だな、やはり、あの時、殺しておけば…ガーネットが止めたんだよな、ミハエルも同調して、フレアと俺は、あの時は殺るべきだと、主張していたが…もう過去の事だな、ガーネットもいないしな……さて、殺すか。
俺は、マーガレットの首を刎ねようとした時、後ろから、気配を感じ、咄嗟に剣を後ろにやった。