出会い
俺は困ったことになった。
実は、所持金が底をついたのだ。
所持金はまた稼げばいいのだが、食料も無くなり、今いる、山の中に食べれそうな物を探す。
だが、そう簡単に食べれそうな物なんてなくて、途方に暮れる。
そんな中、獣道から見えたのは、舗装された道で山賊に襲われている、馬車がいた。
俺は駆けつけ、二十人程いる山賊を素手で、対応し、ちぎっては投げ、ちぎっては投げと次々と倒す。
剣を使うまでも無かったが、その……なんというか、腹が減る、動くと尚更だ。
そこで、馬車に乗っていた人に食料を分けて貰えないか、交渉してみる事にした。
乗っていたのは、少年と金髪の女騎士だ、俺は事情を話すと、女騎士の方は断ると一言言われるも、少年の方が主人らしく、どうぞ乗って下さい、今から家に帰るから、家で食事を出してくれるそうだ。
俺は礼を言い、少年の好意に甘える事にした。
馬車に乗り、自己紹介をする。
俺は勇者トウドウの名を名乗らず、偽名でドモンと名乗った。
少年は、ロベルト・アッカーソンと言い、身なりもしっかりした茶髪のお坊ちゃんって感じだ。
女騎士は、アラン・ホワイトと名乗り、アッカーソン家に仕えてるそうで、さっきも俺の手を借りずとも、賊を追い払えたと、強気に言い放つ。
馬車は十五分程だろうか、走り、ロベルトの屋敷に着いた。
屋敷は大きく、使用人達が庭の整備をしたり、洗濯物を干していたりしている。
馬車から降りると、執事らしきご老人が、迎えてくれる。
ロベルトが執事に事情を話し、早速、食事を振る舞ってくれるそうだ。
あと、執事はマルケスと名乗り、俺に賊を追い払ったことを礼を言い、丁重に屋敷へと案内してくれた。
アッカーソン家は、この辺りを統括している貴族だそうで、それは、それは、由緒正しい家柄だと。
だが、ロベルトは、父親の愛人の子らしく、所謂、妾だそうで、屋敷では肩身が狭いらしく、月に一度、母親がいる町に出かけるそうだ。
母親は同じ屋敷に住まないのか? と聞くと、マルケスはそれが出来る程、正妻の度量は広くないそうで、ロベルトはこの屋敷の主であり、父親の意向で住まわせて貰ってる、状態だと言う。
それは…難儀な事だと、俺が言うとマルケスも同調し、「そうなんです、ロベルト様はお勉強が得意で、跡取りとして期待されているんですが…」と口ごもる。
まだ、何かあるのか? と聞くと、正妻の息子、娘から陰湿なイジメを受けていると、言うのだ。
何でも、事ある事に、靴を隠したり、ベットに蛇を入れたりと枚挙にいとまがないと言う。
マルケスは立場上、キツく言えないらしく、頭を抱えているそうだ。
そうか…それなら、俺が何とかしようと言うと、貴方がですか? と困惑した様子でいる。
まあ…あっちから見たら、俺は、只の客人だろうし、そう思われるのも、しょうがない。
そうこうしている内に、食事が出される、長くデカいダイニングテーブルに通され、席に座る。
俺は客人として扱われ、この屋敷の主でロベルトの父親が自己紹介し、名をアーロンとお呼び下さいと丁寧に言われる、正妻やその娘、息子、も同席しているが…ロベルトがいない事を言うと、あの子は自室で食事をしたいとアーロンから言われる。
(あいつ……なんて肩身が狭い世界で生きてるんだ!)
俺が思ってると、食事が運ばれてくる。
パンにスープ、牛のステーキ、魚のムニエル、デザートのスイーツまで、出てくる。
アーロンは貴族らしく、食べる前に、神に祈るように聖書の一文を読み上げる。
そして、読み上げると、食事をしましょうと俺や家族に言った。
食事は最高だった、上品さに溢れる食事光景は、俺には縁がないとも、思ってたが…旅の仲間であるミハエルに、豆知識として、食事作法を習っておいたお陰で、そつがなく、食事を終える事が出来た。
しかし、ロベルトやあの女騎士アランは、ここに同席しないんだな…俺は、食事の礼をアーロンに言い、ロベルトの部屋まで行くことにした。
執事のマルケスにお願いして、案内して貰うと、部屋をノックする。
「どうぞ」
ロベルトの了承があったので、部屋に入ると……ロベルトは食事をしていた。
女騎士アランも食事をしており、俺は罪悪感を感じた。
「なあ、ロベルト、お前はもっと堂々としてていいんじゃないか? 」
「ドモン! お坊ちゃまに何て事を言うだ、これはお坊ちゃまなりの生存戦略なんだぞ!」
アランから批難の声が上がるが、俺は勇者トウドウ・ギョクズイ、助けの声を上げる事も出来ない者を救うのは勇者の新たな使命だ、そして、ロベルトに提案する。
「俺の剣術を覚えて見る気はないか? 」とロベルトは、首を横に振り、僕がドモンさんみたいには、成れないよと言う。
それなら、魔法は? と言うと、ドモンさん…魔法使えるの? と疑問符付きで返してくるが、俺は使えると、答えた。
これも、以前、仲間のフレアから習った、初級から中級までなら、俺は使える、戦闘では使わず、剣で戦った方が速いので、使わないがな。
そしてロベルトから、じゃあ、教えてとお願いされた。