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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

高級車が一台無くなってる

作者: 孤独

「ほへ~……」


並ぶ2軒の空き家が立て壊された。家を売却したという事だ。

それから1年後くらいに、家を建てる工事が始まった。いや、驚いた。2軒建つもんだと思っていたが、まさかの1軒。ちっこい集合住宅でもない。


「ここらじゃ一番豪華だな」


新築が出来上がった頃にはキラキラに光る。中古の一軒家と大きく違うのが新築、そして、家のサイズだけでもそこらの新築と出来が違うのがこの家。こりゃあなんか、凄いのが来るのかと思っていると、ホントに来やがった。


「あれは高級車だ。それも2台!!」


車に詳しくないからよく分からんが、新築に停まった2台の車は先輩曰く、高級車。バカデカい車……だなしか思ってない自分。それに奥に単車があるとか。凄い金持ち!

配達するお荷物を見たらビックリすること


「社長さんかー」


会社経営をされている社長さんとのこと。

ひぇ~っ、これはなんかあったら面倒な事になりそうだ。

こんな豪華な新築・高級車2台・それに自分とは次元が違うので好みじゃないが、美人奥様・一人の赤ん坊がいるご家庭がお引っ越しされて来たのだ。

自分達とは違って、幸せな人生だろうなって思っていた。……社会的地位がある、新築を買う、奥様がいる、子供がいる、お金持ちである、そんな幸せ要素が詰め込まれている。


のに、幸せになれないのかな?お互いに円満なのだろうか?



◇       ◇



やって来た時すでに、この家族は勝ち組じゃないかと思っていた。

外から見たら豪邸に、高級車2台、夫が社長で妻が美人だぞ。赤ん坊の子供も勝ち組だろって、誰しも思えることだ。

それは外だけだったのか?

いや、絶対にこんな底辺から見れば、幸せだよ。


『荷物は置き配でお願いします。インターフォンを鳴らさないでください。印鑑もポストの中にあるので押してください』


「……はぁ……」


これは有り難い。ポストにご丁寧に説明を書いて頂いてる。自分達、配達を任された会社は気楽でいい。基本はこの通りに配達を行う。

しかし、ちょっと気になっていたのは、奥様や子供は家の中にいるのだ。赤ん坊が泣いている声は時折聞こえていて、それに忙しいのかな?ってのはある。それならそれで、毎日のように荷物があるのはどうなんやろって思う。ホントに凄い量で、ほぼ毎日のように荷物があるんだ。さすが、金持ちと思いながら”置き配”をする。

自分達だけではない、生活協同組合なども利用しており、ホントに外出をしない感じなのだ。はぇ~、専業主婦として勝ち組過ぎるだろ。



そんな配達を数か月続けて、平日のある日だ。その豪邸の近くに向かう女性に、彼女が押すベビーカー。誰だろうと思っていたんだが、あれが奥様とその子供かーって……思っていた。なんかの帰りだったんだろう。自分は丁度、その隣の家に荷物を届けに来ていただけ。横目で見たんだが


「???」


正直、???マークを出した。コロナでもそうはならんよって思っているのが、ベビーカーに黒カーテンを張って、中の子供が見られないようになっているんだ。

あれ、そーいう家庭なの?

そんな話を同じ仕事をする先輩に言ったが、


「奥さんがとにかく変わってんだよな」


荷物の大半は奥様宛てばかりだ。それはいいんだが、


「俺この間、近所のおばさんに怒ってるの見かけたよ」

「どんな感じで」

「挨拶をするな!……って感じ」

「はぁ?」


そりゃ知らない奴に挨拶されたら、不審がるけど。近所に住んでる方が奥様と子供に挨拶するだけで、凄く怒られていたという。


「旦那はあんまり帰ってこないんだけど、普通っぽいらしいよ」


自分もその引っ越し作業中に見た事あるから、確かに旦那はそんな変わった感じがないんだよな。


「まぁ、いいじゃねぇか。金持ちの考えてる事なんか、俺達には分からねぇ。やる事やるだけ」

「そっすね」


とりあえず、奥様には気を付けておくかと思う。


◇        ◇


自分が最後にその奥様と子供を見たのは、たまたま、対面で渡さなきゃいけない荷物だったからだ。


「ご本人様と身分証明できるのをお願いします」

「ああ、呼んでくる」


この時、最初に出て来たのは珍しく旦那だった(日曜日だから普通か?)。

ちょっとビックリしたのが、旦那がエプロンと三角巾を付けて、家の掃除をしてたようだ。社長やりながら、家事もするとかできる夫じゃん。

夫が奥様を呼びに行くと、珍しくはないんだけれど、赤ん坊を抱えながら出て来たのだ。


「お願いします(小声)」

「ども(小声)」


確認しながら気になった事だが、旦那が”赤ちゃんを抱えてあげる”素振りがなかった。掃除をするわけでもなく、呼んだあとで、廊下でスレ違いもしているのに……奥様も奥様で、この子をお願いっとか言わないのが、なんか……。


「ありがとうございます」


普通に……見た感じでは、凄く勝ち組なんだがギクシャクしているような。そんな出来事があってから、2か月後。


「ええぇっ!?離婚したんですか!?」

「らしいぞ。もう奥様宛ての荷物が一切来ないから、そうに違いない」


新築を買って1年ちょっとで、離婚!?ええぇっ!としか、自分のような底辺には驚きしかないし、互いに勿体ないだろって思うのだが。奥様と子供が出ていったと分かり、微妙な雰囲気を推理したくなる。


「奥様がなーんかオカシイのは分かってたんすよね」

「だろうなー。通販し過ぎじゃなくて、絶対に別だって気がする」


引っ越して来た時、2台あった高級車の内、1台は無くなっていた。

揉めるような離婚でもないのが救いなのかもしれない。金は全てを解決する。


「……俺、離婚の予想していいですか」

「おう」

「息子さん。たぶん、”旦那の子”じゃない気がするんですよね?ベビーカーに黒カーテンを付けます?」

「……あー、確かにあんな美人だったらなー。家庭内のDVもあるだろうけど、旦那がそもそも平日にいねぇもんな。朝早く、夜遅くって感じらしいし」


先輩も言っていたが、旦那・奥様・お子さんで外出してる時を見た事があるらしく、やっぱりベビーカーに黒カーテンを付けて、奥様がベビーカーを絶対に持っているのである。その時は、旦那も笑顔で歩いていたらしい。


「ほぼ家にいるのに、置き配希望ってよっぽどの理由……あんな美人が人前に出たくないのはオカシイから、きっと子供を見られたくない感じなんだよな」


どこでそうなったのかは分からないし、憶測でしかないが。


旦那は社長で経済力があって、新築も高級車も用意し、バリバリ働いて。

奥様は専業主婦に集中できて、美人で子供もいるというのに。


「それでも別れる事あるんだな」

「人間関係って難しいですね」



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