五線譜と静寂
雨に濡れる桜たちに願いをこめて
「すき」
たった二文字でアイをさす言葉
机の中の五線譜に綴る想いのカケラ
いたずらだと思った
わたしは告白されたことなんてないし
告白をしたこともないから
からだが大きくて
声も大きい
わたしにかわいいはない
かわいいは他の子にまかせて
わたしは笑っていればいい
恋事は他人事
だからこの話は終わり
「すき 考えてくれた?」
五線譜に綴る想いのカケラ
今度は九文字
考えたよ……
一晩中
だからわたしは五線譜に記す
「いたずらはやめて」
すきは笑えないから
簡単に使ってはダメなんだよ
この想い苦しくて切ない
それはわたしでも知っていること
忘れたいこと
「すき いつも見てる」
五線譜に増える想いのカケラ
今度は八文字
やわらかな女の子の綴り
昨日より心がイタい
だからわたしは五線譜に記す
「あなたは誰?」
わからない
わからないから教えて
想いと願いを
「すき 今日も話しをしたよ」
五線譜に届く想いのカケラ
今度は十一文字
いつも一緒にいる誰か
クラスの子? それとも部活の子?
変わったことはなにもない
わからない
どうして教えてくれないの?
一昨日よりも昨日よりも
イタい……
だからわたしは五線譜に記す
「わたしはどうすればいいの?」
お願いだから教えて
苦しいから教えて
もう耐えられないから
「ハルは鈍感だよね」
五線譜に届く最後のカケラ
八文字で綴られた解答
ハルと呼ぶのはカノジョだけ
街に桜が舞う季節
わたし達は出会った
カノジョがくれたわたしのあだ名
他の友達は誰も使わないそれは
わたしにかけられた祈りの魔法
カノジョは
いつもわたしにいたずらする
それだけのこと
ただそれだけ
だからこれで終わり
カノジョはきっと笑ってる
わたしの気持ちも知らないで
この高鳴りも知らないで
イタいよ……
だから
西日の射す誰もいない教室で
わたしは五線譜に記す
「すき」
お越しくださりありがとうございます。
連載作品が止まっているので
過去別名義で投稿した作品シリーズ第三弾です^^;
一部修正してます。
以前投稿したのは7月7日七夕でした。
お時間がある時に、いいね、感想、誤字修正など頂ければ幸いです。