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第二十四話『ASMRオフコラボ、耳かき』

「これはこれは、耳垢がすごい溜まってるねえ。あんまり掃除できてないのかな?」

「そうかもしれないですねえ。これは、ゆっくりと時間をかけて二人がかりで掃除しないといけないね」



 現在、パジャマ姿のお二人に挟まれて、大変困惑しております。

 二人は、梵天をもって耳かきをはじめる。



「じゃあ、行きます」

『おおう』



 変な声が出てしまった。

 一応、変な声が出ても大丈夫なようにリハーサルを済ませてはいるはずだが、ナルキさんはASMR中に私の声を聞くのはほとんどないので、まだ慣れていないだろう。

 とはいえ、さすがプロというべきか。

 ナルキさんもしろさんも、それで心が乱されることはなく。

 時折、ささやきや吐息を交えながら、じわじわと私達に癒しの波動を送ってくる。

 


 カリカリカリ、と耳介をこする音がする。

 いつもと違うのは、それが両耳から聞こえてくること。

 以前、しろさんにしてもらった指かきと似た感覚。

 両耳をふさがれたことで、音が頭部内に反響する。



「気持ちいい?」

「くすぐったくない?」




 両耳から交互に送られてくる声も、ぞくぞくとした快感を与えてくる。

 片方の声が、もう一方の声をかき消さないように息を合わせる練習をリハーサルでしていた。

 それとは逆に、声を同じタイミングで出す練習もしていた。

 それこそ二人とも、汗びっしょりになってお風呂に入らざるを得なくなるほどにリハーサルは白熱していた。

 元々裏で、声を合わせる練習はしていたようだが、リアルではまた違うということだろう。

 ともあれ、そういった努力の甲斐あって、互いが互いの長所を殺さず、二人がかりで私と視聴者たちを天国まで誘っている。



「びくびくして、かわいいね」

「そうですね、かわいいです」



 くすくすと、ふたりが顔を見合わせて笑いあう。

 なんだか、本当に二人とも仲が良くなっているような気がする。

 まあ、結構長時間二人で呼吸を合わせる練習をしていたから,無理もないけど。

 おかげで、私も視聴者たちも耳から脳みそまで完全に支配されてしまっている。



「ふうーっ」

「はあぁぁぁ」

『おふうっ』




 急激に、両方の耳から息を吹きかけられる。

 しろさんが、吹きこむような冷たい息を。

 ナルキさんは、耳全体を温めるような吐息を。

 両耳から、浴びせられる吐息という今まで感じたことのない刺激にとんでもない声が漏れ出る。




【ふおおおおおおお】

【最高過ぎる】

【気持ちいい】

【両耳はダメエ】




「あ、びくってなっちゃった?」

「かわいいですね。ふーっ、てしただけで声出ちゃってますよね」



 しろさんも、ナルキさんも楽しそうに話しつつ、梵天を持つ手は止まっていない。

 コメント欄と、私の反応を純粋に喜んでいるらしい。

 右側で梵天のふわふわしたほうでポフポフ、という音を出しながら耳全体をしろさんが叩いている。

 叩きながら、はーっ、と温かい息を吐きかけてくる。

 ナルキさんは左側で、梵天の匙で耳奥をカリカリと搔いている。

 耳奥を刺激すると同時に、耳元で「かりかりかりかり」とオノマトペを吹き込んでくる。




「今度は、指かきしていこうか」

「そうですねえ。ゆっくり入れていこうか」



 二人とも、梵天から手を放して今度は指を耳にそろそろと近づけていく。

 そして、耳穴にそろそろと入れていく。

 関節を動かしながら、耳道を突き進み、鼓膜をトントンと刺激する。



「こうやって丹念にお耳を掃除しないと、この後あることをする時に困っちゃうからね」

「そうだねー。何をするんだろうね?」

「いやー、全然わからないんだよな。何をするんだろう」




 いやーなんだろうなー。

 全然わからないなー。

 一体何なんだろうなー。

 ……なぜだかすごい期待できる。




【耳舐めじゃん】

【両耳舐めってこと?】

【うおおおおおおおおお!】

【今でも限界近いのに、これは……寝てしまうぜ】





 期待を持たせつつ、しろさんとナルキさんは指かきを続行する。

 ぐりぐりと、ごりごりと、あるいはぞわぞわと。

 耳の表面を、耳道を、鼓膜を。

 虫のように動き回る指が、私の脳内を蹂躙していく。

 


『あっ』



 すぽん、と耳から彼女たちの指が外れて。

 思わず、惜しむような声が出てしまう。

 


 すっ、と二人の顔が私の両耳のすぐ近くに来ていた。

 先ほどまでの、耳かきをするためにわずかに開けていた距離すらなくして。

 しろさんとナルキさんの形のいい鼻や唇が、物理的にマイクに触れるか触れないかというとことまで距離を詰めている。

 すんすん、と耳に鼻をくっつけて匂いを嗅いでいる。

 耳だけでなく、その周りの頬などの匂いも嗅いでいる。

 嗅覚がないので、私には今の私の匂いがわからない。

 ただまあ、彼女らの様子から推測するに、臭くはないのだろう。

 臭かったから泣く。

 まあ、私には涙腺とかないけど。



「うん、臭くないね」

「汚れもないよ。きれいになったね」



 それはよかった。

 息がかかりそうな、いや実際に現在進行形でかかっている距離なので落ち着かないが、それもまた良い。

 


「耳のお掃除完了、ですね」

「じゃあ、みんなお待ちかねの」




【ん?】

【いよいよか】

【ほお】

【耳舐めだ!】

 

 

 二人の口が、私の傍でゆっくりと開いていく。

 口から、軟体生物が這い出てくる。

 

 


「「耳舐め、していこっか」」



 ナルキさんと、しろさんの。

 息ぴったりの、かつどうしようもない程に色気のある声を聞いて。

 喉もないはずの私の口からごくり、という音がした。

現在カクヨムというサイトにてコンテストに参加しています。

良かったらリンクをクリックして、応援をよろしくお願いいたします。

https://kakuyomu.jp/works/16817330649978711652



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