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第三十六話『クリスマスには映画が似合う』

 私は、今までの人生において、そしてVtuberというコンテンツを見てきたうえで……一つだけ避けていたジャンルがある。



 それは、同時視聴配信である。

 そもそも、私は今までVtuberというものを作業の合間に見ることが多かった。

なので、映画などを見ながら配信も見るというコンセプトになっている同時視聴配信はどうにも見る気が起きなかった。

 別にリアクション単体で作業BGMにすることもできるんだろうが、なんというかみじめに感じてしまうというのが理由だろう。

 それは当然の話。

 だって、私は仕事しながら聞いているのに、画面の向こうの配信者やほかのリスナーは、映画を観てのんべりだらりとしているわけで。

 そういう風に一度意識してしまうと、一体自分は何をやっているんだろうという気分になってしまうのである。

 そんな事情から、私は同時視聴配信というコンテンツを避けていたわけだが、今は違う。

 仕事をする必要がなくなり、文乃さんとはよく映画やアニメを観たりする。

 時には、Vtuberさんの同時視聴配信をパソコンで流しながら、テレビで映画やドラマ、アニメを観ていたりすることもある。  


 


 今どきは、テレビを見るにもイヤホンを使うことができる。

 



 今日見る映画は、「ディストラクター」というタイトルである。

 海外の映画であり、工場見学に向かった高校生たちが暴走する機械に巻き込まれるという内容になっている。

 この映画の特に良いところは、CGである。

 なぜか戦艦と戦車と戦闘機と工場がそれぞれ変形して巨大ロボット四つ巴大決戦が起こってしまったのだけれど、とにかくそこのアクションシーンが圧巻である。

 CGにどんだけ予算使ってるんだよというクオリティである。

 因みに脚本は……以前一度だけ見たことのある身として言わせてもらえば。

 まあ、その凡作だよねという一言に尽きる。

 いやあの、悪いわけではないんだけどね。

 ギャグシーンも、ストーリーが展開されるシリアスシーンも含めて展開が全て読めてしまうのだ。

 まあ、よく言えば王道ともいえる。

 悪く言えば、ありきたりだろうか。

 正直、最初に見た時の感想は「これだけ金がかかっていれば、脚本が素人のものでもある程度売れはしただろうな」というもの。

 世間的な評判自体はかなり良かったからね。



「工場かあ……。あんまりいい思い出ないねえ」

『そうなんですか?』

「うーん、昔工場見学に学校行事で行くことになったんだけど、まあいろいろあったんだよね」

『それ、言っても大丈夫ですか?』



 しまった。うっかり突っ込んでしまった。

 あんまり具体的なことを言うと、なんというか身バレしたりはしないだろうか。

 工場の作る製品によっては、そこでしか作られていないなんてものもざらにある。

 いわゆる、町工場から精密機械の部品が作られていたりするのだ。

 で、オンリーワンの工場だと普通に住所が割れる恐れがある。

 そんな遠くの工場に行くわけがないからね。

 詳細はともかく、かなり絞られてしまうだろう。

 もしかすると、過去に工場見学に行った学校を特定出来るかもしれない。

 いわゆる特定厨の恐ろしさは、そこが知れないからな。



【色々?】

【事故でも起こったんか?】

【結構指飛んだりとかあるらしいよね】

【昔……?今でも高校生であるはず。妙だな……】



 コメントを見たところ、特に私の心配は杞憂であるようだった。

 工場で何があったのか考察しているものと、学生時代を昔と言っていることへの突っ込みである。

 女子高生設定のVtuberは数多く存在しているが、実際にそのVtuberを演じているいわゆる「中の人」が女子高生であるとは限らない。

 むしろ、リスナーの大半は「中の人は女子高生ではない」と思って観に来ているし、そういった失言というかメタ発言を楽しんでいる節もある。

 私はあくまでコメントをするタイプではないので、あまりよくわからない話ではあるが。

 


「うーん、いやそういうグロテスクなことじゃなくてね、単純に機械トラブルで見るはずだった工程が一切見れなくなって、ぱあになっちゃたってわけ」

『ああ……』



【悲しいなあ】

【あっ】

【そういうトラブルは、どれだけ頑張っても起きるときは起きるからしゃーなし】



「まあ、別に特段その工場に思い入れがあったというわけでもなければ見たいものがあったわけでもないからね。そこまでのダメージはないんだけど」



 何もすることがないというのはつらかったな、と彼女はこぼす。



【気持ちはわかる】

【今は、Vtuberを含めて娯楽には事欠かないからなあ。何もできない時間ってのはほとんどないよね】



 確かに、何もない時間帯というのはそれなりにきついものがある。

 夜、文乃さんが寝静まってから朝起きるまで、本当に何もすることがないせいで退屈なのだ。

 最近は、うなされるしろさんの声を聞いても慣れてしまって、ほとんど何も感じなくなった。

 異常と思われるかもしれないが、半年間ずっとうなされているのでそれになじんでしまったのだろう。

 



 物語は、主人公たちがスクールバスに乗って工場へ向かうところから始まる。

 日本にはあまりないが、欧米ではそこまで珍しいものでもないらしい。

 いやあくまでドラマとかで見ただけだから、本当かどうかは知らないけどね。



【バス乗れないわ。酔いがひどくて】



「へえー、バスに乗れない人もいるんだね。逆に私、電車には乗ったこと一度もないんだよね」



【待って、それ住んでるところバレない?】

【冥界には電車がないんやろ】

【冥界四国説ある】



「そうそう、冥界には電車がないんだよ。常に親の所有する車とかで移動してたから、必要なかったという」

『しろさん、一旦話変えましょう』



 主人公たちは、引率の教師とともに工場に向かう。

 バスの中では、喋ったり、歌ったり、本を読んだり、ヘッドホンで音楽を聴いたり、眠ったりと、キャラクターの行動は千差万別だ。



「こうやって、どのキャラクターがどういう性格なのかを示すのはいいよね。一人一人のキャラクターがよくたっている。あ、ちなみに私はバスの移動中は前の方の席でずっと寝てました」



【あっ】

【おいやめろ】

【友達がいる人は、隣に座りたいから先んじて席をとっていくやつか】



 どうやら、コメント欄にいる皆さんは、文乃さんと同じ感性の持ち主らしい。

 黒歴史を打ち抜かれてうめく、地獄絵図になり果てていた。

 私?私は親の了解が下りなかったので遠足とかそういう行事系はほとんどいけなかったんだよね。

 多分、旅行費を出すのが嫌だったんだろうな、と推測する。

 高校生の時は私もバイトしていたけど、その時は大学生になるための資金繰りもあったから、本当にそれどころじゃなかったというのもある。

 閑話休題。



 映画同時視聴ASMRという、デートを疑似的に体験できる配信ではあったが、今のところ、甘い雰囲気は微塵もない。

 どちらかといえば、普段の雑談配信の空気感に近い。

 いつものように、しろさんがコンテンツについてや、そこから派生した話をして、リスナーが彼女の話に対して思い思いのコメントをしていく。

 現状、まだそこまでしろさんと(マイク)の距離が近くないのも原因ではあると思う。

 まあ、映画って本来話しながら見るものでもないからね。

 コメント欄の雰囲気を見ると。



【デートじゃん】

【クリスマスデートありがとう¥500】

【いつもより雰囲気柔らかい気がする】



 ……まあ、視聴者が楽しんでくれているなら、いいかな。

 というか、普通に私と文乃さんが過ごしている時の空気って、傍から見るとデートに見えるのかな?

 ……考えないようにしよう。


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