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第三十二話『ゲーム配信やるってマジ?』

永眠しろさんがデビューして、三か月が経過していた。

 季節は十一月。

 外に出れば肌寒いと感じられる季節である。



「さて、作戦会議をはじめたいんだけど、いいかな」

『私はいつでも、何時間でも大丈夫ですよ。この体になってから、疲労とは無縁なので』



 厳密には精神的な疲労はある。

 なので、目を閉じて意識を手放す時間もあったりする。

 手、ないけど。

 ただ、手はおろか肉体的な疲労というものがなくなった以上は、誤差の範疇だ。

 


 閑話休題。

 作戦会議。

 私と文乃さんが何度も繰り返してきたことである。

 内容はたいていが配信内容について。

 特に、ASMR配信については今までも色々な企画に挑戦してきた。

 逆にASMR以外の企画をあまりやってこなかったので今回もまたASMRの企画会議だろうなとあたりを付けていた。



「そ、そっかあ。じゃあ本題に入るね。今回私がやりたい企画はゲームしながらASMR、だよ」

『……ゲームをしながら?』

「そう、ゲームをしながら」




 ゲームをしながらASMR?

 そんなものあるんですか?

 聞いたこともなかったのでそれを疑問に思って聞いたが、彼女は「まあちょっと見てなよ」といって、パソコンの画面の目に私の頭を運んでくれ、ついでにヘッドホンを頭に取り付けてくれた。



 彼女にU-TUBEの検索画面を見せてもらうと。



『うわ、本当だ』

「でしょ?」




 ふんす、と彼女がなぜかどや顔をしている。

 可愛いからいいけど。



 ともかく、ゲームをしながらASMR配信をしている動画がU-TUBE上には複数上がっている。

 ヘッドホンを借りて聞いてみれば、ゲーム音も乗っているが、不快にならない程度に音量を抑えている。

 あくまで本命はASMRの方であるらしい。

 爆音でゲーム音が流れるのを想像していたが、この程度の音量であれば、BGM程度であり、ASMRの妨げにはならないであろう。

 最近は永眠しろのASMRだけを聞いていたが、久しぶりのASMRは悪くない。

 いや、むしろ耳が以前より肥えて、心に余裕が生まれたことでより一層訊くことができている。

 


「はい、そこまで」

『あの、今いいところだったんですけど……』

「だったらなおさらダメ」



「君が私以外のASMRを聞いているのを見ると、無性に腹が立つ」

『……ええ』

「あの、引いたかい?」

『引いたりはしませんけど、なんでなんだろうとは思いますね』

「それは……察してくれよ」

『…………?』



 意味が分からない。

 どういうことだろうか。

 もしかすると、ヘッドホンが使えないからだろうか。

 別に、ヘッドホンもパソコンも、マイクもあくまで彼女の所有物だから好きにすればいいと思うけど。



「まあいいさ、とりあえずゲームをしながらASMRというコンテンツの良さは伝わっただろう?」

『ええ、それはもう』



 しかし、この配信は正直かなりいいと思う。

 まるで、すぐそばでVtuber永眠しろのゲームプレイを見ているような感覚に陥ることができる。

 距離の近さを売りにしている彼女には相性がいいかもしれない。

 



 だが、私にはもう一つ疑問があった。

 



『あの、文乃さんってゲームできるんですか(・・・・・・・・・・)?』

「…………」



 そう、そこなのである。

 基本的に、私は彼女の勉強部屋兼配信部屋兼寝室に置かれている。

 それゆえに、彼女のプライベートをほとんど把握している。

 それこそ、ご飯の食べ方の癖も把握している。

 舐りばしはお行儀が悪いと思うんです、文乃さん。

 だが、そんな私をして、彼女がゲームをするところを見たことがない。

 大体、映像作品を観るか、漫画を読むか、音楽を聴くか。

 彼女の娯楽はその三つに集約されている。

 ゲームをやったことがあるのかも怪しい。

 そういうのって、お金持ちの家とかだと厳しいイメージあるしね。

 いや、配信を許してくれている時点で、かなりそこら辺の束縛は緩いのだろうか。

 いずれにせよ、彼女のプレイヤースキルがまるで見えてこないのが不安なのだ。



「うまい、下手で言えば下手だと思うよ。なにせ、やったことがないからね」

『…………。ないのにこの配信でやろうとしてるんですか?』

「うん、そうだね」




 そっかあ。

 やったことがないのに、配信でやるつもりだったのかあ。

 まあこれも、この前の金属音みたいな苦手なことへの挑戦なのかもしれない。



『とりあえず、文乃さんにはゲーム機を買ってもらわないといけませんね』

「ゲーム機?」

『え?』

「え?」



 あの、もしかしなくてもこれは。

 



『文乃さん、ゲーム機がなんだかご存じですか?』

「あの、よくわからないんだけど、もしかしてゲームをするにはパソコンとは別の専用の機械が必要なの?」

『……まあ、そうですね』




 パソコンでできるゲームももちろんあるが、少なくとも今観ていたゲームは専用のゲーム機が必要だ。

 それすら知らなかったのか。

 まあでも、ゲームをやったことがない人なんてそういうものかもしれない。

 私も、ゲームを始めるまではRPGという単語を、ハードの一種だと思ってたしね。

 知らない人はとことん知らないものだろうし、仕方がない。




『とりあえず、今日の配信は別のものにしませんか?正直今からゲームを購入してもまにあわないような気がするんですが』

「いいや、それはできないね」

『なぜです?』



 よもや、ゲームに対して並々ならぬ熱意を秘めていたのだろうか。

 実は、ゲームにだけは厳しい親御さんだったりするのだろうか。

 そんな私の推測は。



「あの、もう発表しちゃって、SNSでサムネも出してるから今更変えられない……」

『ああ……』




 目を逸らしながら、冷や汗を垂らしながら

 とりあえず、今できることをやろう。



『まあ、ゲーム機を買わなくてもプレイできるゲームはありますから、それをやることにしましょうか』

「あ、そういうのがあるんだね」

『ええ、パソコンのみでできるゲームがあったはずです』




「そうなんだ」

『そうですね、このゲームなんてどうですか?たぶん初心者向けだと思うんですけど』

「ほうほう、これが初心者向けなんだね。わかった、取り敢えずインストールしてみるよ」



 私の提案に従って、彼女はゲームを起動する。

 それから二時間後、彼女にとって、人生初のゲーム配信が幕を開けた。

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