一周年を迎えたら白熱するクイズ大会 中編
「さあさあ! メリカちゃん考案のベタノロクイズ大会優勝を目指し、我こそはと集まった四人の挑戦者たち!!」
お前が無理やり集めたんだろうが。
そんなこんなで、これからいつものメンバーでベタノロクイズ大会とやらが行われるようだ。何で俺まで……。
「ここで回答者の皆様を一人ずつ紹介していきましょう! まず一人目! 強力な魅了魔法とツタの使い手! 同性に発情させたら右に出るものはいない、自他ともに認める変態百合ラウネ! メノージャ=ロエリー選手!」
「変態だなんて、褒めても何も出ませんわよ……うふふふ……!」
えっ、褒め言葉なの?
メノージャはメリカの罵倒にハァハァと熱い吐息を漏らしながら身悶えしている。もしテレビ番組だったらこの時点で放送事故まっしぐらである。
「続きまして! 死人のように虚ろな赤目は獲物を決して逃がさない! 銀髪の無気力アーチャー、クムン=ハレープ貧乳選手です!」
「貧乳選手ってなんだゴラァ!! テメエもウチと遜色ない胸囲だろうがクソアマ!!」
クムンちゃんぶちギレである。ゲストに『クソアマ』と言われた司会者は史上初であろう。
「そしてそして三人目は! シルベラ国王の娘にして容姿端麗、文武両道、才色兼備! まさに完璧王女、セクリナータ=シルベラ選手!」
「ちょっ……あんまり褒めないでよ恥ずかしいから……!」
メリカの紹介に顔を真っ赤にして突っ伏すセクリ。
そうだった、こいつは褒められるのが大の苦手なんだよな。オタクーズの惨劇が甦る。
しかし目上の立場のヤツにだけ一切ふざけずにマトモな紹介しやがって……ホントに汚いなあの司会者。
ん、待てよ? ということは……。
メリカより年上で、世界を救う勇者様であるヨシハルくんは、それはもうメチャメチャに褒めちぎってもらえるのでは? わくわく。
「端っこの奴はサカギリでーす。以上の四名でお送りしますっ!」
残飯処理みたいな紹介ですね。
「はい、それではクイズのルールを説明していきましょう! 皆様にはこの世界に存在する様々なヒトやモノについての問題にお答えいただきます! 回答権は一問につきそれぞれ一回! 最も正解数の多い選手が優勝でーす!」
「優勝したら何かあるピョン?」
「なんだか頭がかゆいニャン?」
「プニプニ?」
「もちろん! 優勝者には豪華な商品をご用意しております! 何がもらえるかは優勝してからのお楽しみ!」
スライムたちの質問にメリカがウインクをして答える。へえ、景品まで用意してあるなんてなかなか本格的だな。
てか一向に帰らないなあのモノノケ三重奏。もうすっかり観客気取りなんだけど。
「ルール説明は以上となります! それではベタノロクイズ、スタートでーす!!」
メリカが高らかに開会宣言をしたあと、これから読み上げる問題が書かれているのであろう小さな紙へと、鼻唄まじりに視線を移す。
さてさて、商品がかかった勝負事とあっちゃ負けるわけにはいかねえやな。
……なんて意気込んではみたが、悪いけど俺の優勝はほぼ150パーセント決まっている。
なぜならクイズの出題内容は『この世界にあるヒトやモノ』。
俺は一周目でこの世界を隅から隅まで冒険し、魔王の城にまで辿り着いたんだ。
あらゆる場所、あらゆる人物の記憶や情報が頭の中に詰まっている。
俺よりこの世界に詳しい奴はいない。すなわち俺に解けない問題なんて存在しないんだよ。
くくく……せっかく集まってもらったところ悪いが、セクリたちには一問たりとも答えさせるつもりはねえよ。
優勝は…………豪華商品は俺様のモンだ!! げひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
「第一問! あたしの母さんことヒューサ=テレットの性感帯はどこでしょうか?」
お前マジで頭おかしいのか?
「おいテメエいい加減にしろや!! 一問目に出すクイズじゃねえだろ!! いや何問目でもダメだけど!」
「おーっとヨシハル選手! シンキングタイム中にも関わらず、またしても司会者に暴言か~? まったく非常識きわまりないですねぇ」
「非常識きわまりないのはテメエだろうが!! どこの世界に肉親の敏感スポットを第三者にシンキングさせる娘がいるんだよ!? いくらヒューサさんと言えどプライバシーがあるんだぞ可哀想だろ!!」
「ふぇ……? この問題、母さんが出してほしいってあたしに頼んできたんだけど」
頭クラクラしてきた。
「メリカちゃんの言う通りですよヨシハルくん。この問題を作成したのは他でもない……ワタシです」
そう言って重罪エロ淑女が優雅に入室。
「記念すべき一問目にはもってこいの問題かと思いましてね」
『もってこい』って言葉が誤用されることあるんだ。
「さあさあみなさん早押しですよ! ぜひお手元のボタンを景気よくポーンと!」
無茶をおっしゃる。
「あぅぅ……」
純粋無垢なセクリたんが俺の隣で顔を茹でダコのようにして俯いている。
そうだよな、答えたくないよな。こんな問題に意気揚々と答えられるヤツなんてよっぽどのヘンタイに決まっ
「乳ですわ!!!」
そうだった最寄りにヘンタイいたわ。
ピポーン! という軽快なサウンドとともに、メノージャが迷いなく回答。
「ざんねーん! メノージャ選手、不正解です! しかしなかなかいい着眼点ではないですかね、出題者のヒューサさん?」
「そうですね……確かにワタシはパイオツもそれなりに効きますが、やはり一番感じる耳に比べるといささか刺激が足りないと言いますか……」
答え言うてもうてるやんけおい。
「ちょ、ちょっと母さん! まだ正解出しちゃダメだよ!!」
「…………はっ、申し訳ありませんメリカちゃん。性的な話題になるとつい饒舌に……」
ド下ネタ問題に加えてこのグダグダ加減。大事故にも程があるだろ。
「ごほん、というわけで今の問題は正解者なし! 続いての問題に参りましょう!」
まさかこれからもずっと今みたいな変態問題が出るのか? だとすると色んな意味で答えられねえ……。
「第二問は三択問題! ヨシハル選手とセクリナータ選手について出題します!」
「えっ、俺?」
「私も……?」
「二周目の冒険にて、セクリナータ選手がヨシハル選手の仲間になる決め手となった次の会話の中で、空欄に当てはまるセリフをお答えください!」
【ヨシハル「○○○○○○○?」
セクリナータ「……………ばーか」】
あっ、これはメチャクチャ覚えてるわ。
それまでも何回か使ったし、その度にセクリに殴られたり蹴られたりしてるからか、強く印象に残ってる。
「では選択肢を順に挙げていきます! まずは一番!」
【ヨシハル「シャルウィーダンス?」
セクリナータ「……………ばーか」】
はいコレ!
間違いないな、俺の超絶カッコいい決めゼリフだもの。他の二つを聞くまでもない。
この問題、もらった!
「はい、それでは二番!」
【ヨシハル「あぴぇぴぇぴぇぴぇ~! イチたすイチって、なんだったっけ~?」
セクリナータ「……………ばーか」】
いや絶対違うだろこれ!!
ヒト様をこんな致命的バカキャラに仕立て上げてんじゃねえよ!!
こうなってくるとその後のセクリの『ばーか』の意味合いも変わってくるじゃねえかふざけんな!!
「最後に三番!」
【ヨシハル「よろしければその真っ赤なハイヒールで私めを思いっきり踏んづけて下さいませぬか?」
セクリナータ「………………キモ」】
はい僕いまからキレまーーーす!!!
「ヒトをおちょくるのもいい加減にしろやクソガキ!! 最後のに関してはもはやセクリのセリフも変わっちまってんじゃねえか!!」
「おーっと! さすがヨシハル選手、この問題は楽勝の様子です!」
「あたりめえだろ!! ヨシハル選手じゃなくても分かるわ!! こんなの満場一致で最初のやつに決まって……」
「ウチはその場にいなかったので、これはなかなかの難問ですね……ヨシハルの知能的に二番が濃厚でしょうか」
「いえいえクムンさん、あの男は正真正銘のヘンタイですから、三番も大いに有り得ますわ」
もぎゃああああああ苦戦してる!!!
百歩譲って二番は分かるけど三番は絶対ないだろ!! 元の文とセクリの発言が違うんだもの!!
さすがに気付けよメノージャ! そしてお前にだけはヘンタイって言われたくねえわ!!
あっごめんあとヒューサさんにも言われたくない!! ニャンピョン兄弟にも!! ヴァカ王子にも!! いやヘンタイ多いな俺の周り!!
「クムンもメノージャも酷すぎるだろ…………はぁ、仕方ねえな。ここは俺たち二人でバシッと正解してやろうぜ。なぁセク」
「うーん……普通に考えれば二番だけれど、破廉恥ヨシハルなら三番も考えられるわね。どうしましょう分からないわ……せっかく二択まで絞れたのに」
お前らほんと、ぶっ潰すぞ。
みなさんは何問正解できましたか?
次回でスピンオフ完結です。




