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ふっふっふっ。この婚約破棄、全て計画通り!…あれ?なんか、おかしくない?

作者: 渚

「ここに、エミリア公爵令嬢との婚約破棄を告げる!」


そう、高らかに叫んだ彼は、この国の王太子。


隣には、異世界からきた聖女であるアカリを侍らせている。


アカリは、黒髪黒目と云う、実に珍しい出で立ちで、尚且つ可愛らしい見た目であった。


彼女は、不安そうにエミリアの顔色を伺っている。


「っ!そんなっ!何故!?」


エミリアは、大袈裟なくらいに驚いた。


すると、苦しそうに見えるほど苦々しく、王太子であるレオンは告げる。


「証拠はもう、あるんだよ、エミリア」


「なっ!なにをっ!」


レオンは、隠していた紙を取り出す。


「これは、君が、アカリを虐めていた、と云う署名だ。既に君がアカリに暴言を吐いたり、アカリのものを取ったりしていると云う証拠もあるんだよ。僕も実際目撃したし、ね」


遠い目をするレオン。


署名した者は、エミリアと仲良くしていた者ばかりだった。


「わっ、私はっ」


「もう、君に弁解の余地はないんだ、エミリア」





さて。この、茶番であるが。


話は、数ヶ月前に遡る。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーside Emilia


「殿下、私と婚約破棄していただけませんこと?」


いつものように、王宮の温室で一口紅茶を啜った私は、殿下にそう告げた。


ゴホッと咽せる殿下。


…汚いですよ?


私がそう云う目をしていたことに気がついたのだろうか。


ごほん、と咳払いをしてから殿下はまるで自分を落ち着けるように深く呼吸をした。


「…エミリア?どう云うこと?」


「私、修道女になりたいんですの」


「…修道女?」


殿下は一言一言を確かめるように呟く。


「ええ!私に落ち度がある婚約破棄でしたら、殿下に影響はさしてございませんし!嗚呼。最近殿下が目で追ってらっしゃるアカリ様なんて、次の婚約者によろしいんじゃなくって?私、彼女を虐めますから、殿下はそれを颯爽と助けに来てくださいな!そうしたら、みんな幸せ!宜しいでしょう?」


殿下に首を傾げて尋ねる。


「…嗚呼。そうだな」


殿下はそう、独り言とも取れるくらい小さな声で云うと、私を見もせずすたすたとその場を去って行った。


「やっぱり、私に対する興味なんて、既に失せてしまったのよね…」


私の呟きは誰に拾われることもなく、消えて行った。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーside Leon


…修道女か。


矢張り、エミリアは僕のことなんて、どうでもいいんだな。


僕が思っているのはエミリアだけなのに、監視対象であるアカリに思いを寄せていると勘違いされるなんて。


最近贈った101本の薔薇についたメッセージは、どう思っていたんだ。


『これ以上ないほど愛しています』


花言葉とかけて、贈ったメッセージ。


…滅茶苦茶、恥ずかしかったんだけどなぁ。


本心であることは間違いなかったけど。


「殿下!こちら、証拠が集まりました!」


その彼女は、勢いよく部屋の扉を開けて、自分が断罪されるための証拠を叩きつけてくる始末。


彼女の願いは何だって叶えてあげようと思ってた。


それが修道女とは…。


まぁ、他に男が出来たとかではないだけマシか。


そう、思うことにした。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


さて、話を戻そう。


その場は静まり返った。


口を開くのを誰もが恐れていた。


…一人を除いて。


「そんなっ!嘘です!エミリア様は、虐めなんて大層なことできません!」


そう叫んだのは、アカリ。


「…どう云うことかしら?」


エミリアの眉がぴくり、と上がる。


「私に暴言を吐いたと仰いますが、『貴方、え、ええと。あ、嗚呼!そうよ!馬鹿なのよ!』そういちいち誇らしそうに云われるんです。ある日なんて、『ねぇ、アカリ様!聞いて驚きなさい!安本丹っ!』ですって。私、涙が出そうでした。こんな可愛い人いませんよ!」


「な、なにをっ!」


「それに、私のものを取った、と仰いますが、私の大切なブローチを取って磨いて返してくるんですよ?不良品なんか返品交換して返ってきてたんです」


「うっ!」


おい、エミリア。お前何してるんじゃ。


「あ、殿下、婚約破棄なさるなら、私がエミリア様の恋人に立候補していいですか?こんなツンデレ、私が養いたいっ!」


「ちょっと、待ちなさ」


「駄目だ!」


そう叫んだのは、レオン。


「僕は、10歳のときから、エミリアのことを好きだった。エミリアの夢なら何でも叶えてあげたかった。それが、修道女になることだったんだ!彼女の夢を阻むことは、誰だって許さない!」


「…殿下?」


「っ、嗚呼。すまない。エミリアは問題なく修道女になれるよう手配する。計画は狂ってしまったが」


「アカリ様を好きではないのですか?」


「ずっと君が好きだと云っている」


「形式的なもの、かと、思っていましたわ」


「僕は、君に対していつも誠実でありたいと思っていたから、嘘はついたことがないよ」


「殿下、いつも、私の目を見てくださらないもの」


「君を目の前にすると、緊張してしまうんだ」


「どうしましょう、私、今更、修道院に行きたく、ない、なんて…」


「君の願いはすべて叶えるよ」



そうして、幸せに、アカリの乱入を乗り越えつつ、暮らしたとか、暮らしてないとか…


Fin.

とてつもないくらいの茶番ですが、どうしようもなく書きたくなったので。


作者は満足ですが、読者の皆様は、満足じゃないかもしれませんね。すみません。


楽しかった。

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