表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

上中下の上

第03話「まな板」の前日談です。

数字話主人公とは別人物ですし、

この話の語り手はこの話で数字話主人公とは会っていません。

 俺が料理を作るようになったのは、ただの気まぐれだ。本を見ていてへぇと思って作ってみたら出来た、それだけだ。

 出会った奴らに話を聞いてみると、作り方の本を読んだりネットで調べたりしても、最初は大抵失敗する、それが選り分けになっているようで、嫌になって作るのを止める奴と、考えたり工夫したりして作れるようになる奴と分かれるようだ。

 俺はそんなことはなかった。書いてあるとおりにやったら出来た。大抵の奴が「できねーよ!」と思うことも俺には起こらなかった。

 たんに適性の問題だろうか、才能なんかではないと思う、説明をした奴が表現しきれなかった角度とかスピードとか、そういったものが偶然なぞらえることが出来たんだと思う。

 だから作れても、それほど楽しくない。ただ組み立てている感覚だ。

 味もよく解らない。

 作りたてのバターは美味いと言われても、生クリームからバターを作ったって売られているものとの違いなぞ全く解らない。ご飯を炊くのも三十年前の電気炊飯器、現在の電気炊飯器、機会があって竈で炊いたものなど食べ比べてみても、そんなに味が違うとは思えない。というか自分で作って「うわ!美味い!」なんて思ったことは一度もない。

 だから他人が食べてくれたのは、母親と当時付き合っていた女性の二人で、二人とも「美味しい」とは言ってくれたが、身贔屓ではないかと信じられない。

 でもまぁ食べてもらって酷いことも言われないし、自分でも手持ちぶさた、手慰みという感じで、作ること自体は好きなようだ。

 自分の舌に自信は持てないが、作っていて色、匂い、粘り、固さ、音などなど、そういう味以外のことに全神経を使う。結構疲れるが、ジャストなところで手を止められたときには、さすがに気分が高揚する。


 その後、その付き合っていた女性のご両親にも食べてもらうことになり、そのお父さんから頼まれて、お父さんの仕事先の人との会食に作ることになったことはあった。

 あまり責任が大きいことには関わり合いたくないのだが、付き合っている女性の父親の機嫌をとることは大切だ、昼食を作ることになり、嫌いな食べ物とか食べられない食べ物とかを聞き、メニューを考え、やってみた。

 好評だったのは不評なことよりは嬉しいが、別に大して嬉しくもない。しかし社交の場でもあるので愛想笑いをしないといけない。

 こんなことが続くのかなと思っていたら、女性と別れることになり、ご両親との縁も切れた。

 人生何があるか解らない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ