8歩
洞窟の入口あたりが、ゆっくりと明るくなる。
(朝・・・か。)
ラエドは上体を起こし、少し離れたところで横になっているタルジュをみる。眠っているあどけない表情は、やはり妹のようにみえる。
大きなあくびをし、目を閉じた。王宮のふかふかベッドが恋しくなることもだいぶなくなってきた。
(しかし、昨夜はいつもより良く眠れた。)
大蛇との戦いで疲弊したせいか、とも思えたが、おそらく誰かが傍にいてくれたからだとわかった。同時に、相手もそう感じていると良いなと思った。
そしてタルジュの言葉を思い出す。
彼は言った、自分の道は自分で決めるためにムサフィラになったと。半ば、勢いだけで出てきてしまった自分とは大違いだ。だが、その気持ちは大変共感できた。各々、抱える悩みは違えど、その先に見出したい答えは近いのではなかろうか。そう思うと、少しだけ嬉しかった。
「ん・・・・・・うん?」
タルジュがうっすら目をあけた。
「おはようさん。」
ラエドは笑顔で声をかけた。
「どうだ、良く寝れたか?」
その言葉に、タルジュは大げさに反応する。
「ふぇ!?あ、そうか・・・・。」
昨日のことを思い出し、少し寝癖のついた髪を手ですきながら、恥ずかしそうに小声で、はい・・と答えた。
「昨日、話していて思ったんだが。」
ラエドが改まったように話し始めた。
「俺は、お前のようにはっきりした思いがあって旅を始めたわけではない。が、お前と似たような気持ちをもっている。」
「?」
「まあ、俺も、なんというか・・・自分の道、というものを見つけたいとおもってるんだ。」
タルジュはコクンと頷いた。
「それでだ、ここで出会ったのも何かの縁。しばらく一緒に旅をさせてもらえないだろうか?」
「え・・・・。」
「いや、もちろんお前が嫌なら別にこのまま別れてもいい。お前は人と関わらずにとも言っていたしな。でも・・。」
「でも?」
少し間をあけて、タルジュの目をまっすぐにみつめ、言葉を続ける。
「せっかくなら、そんな道をみつける素晴らしさを、俺は誰かと共有したいと思ったんだ。」
ラエドの申し出に、タルジュはぽかんとした。だが、同時にくすぐったいような照れ臭いような感情も沸き上がった。
(みつける素晴らしさ、共有・・。)
この一か月、淡々と旅を続けてきた。ひとり、自分の過去と行き場のない感情を抱えながら。
(誰かと関わることも、なにかのヒントになるのかな?)
「いいよ。」
「本当か!?」
タルジュの返事にラエドは心底嬉しそうに笑った。
「よし、じゃあしばらくの間よろしく頼む、相棒。」
ラエドが右手を差し出した。
「よろしく。まあ、これでラエドも毒キノコにあたる心配はなくなったね。」
クスクスと笑いながらタルジュも右手を差し出した。
「いったな!いや、でもそれは間違ってないな。」
二人は、昨日とは異なる、かたい握手を交わした。
これからの旅路に大きな期待をよせて。
二人の旅は始まったばかり。。。。
読んでくださいましてありがとうございます~
6月24日追記
次回まで数日お時間をください!