7歩
時間がなくて、急ぎ投稿しました。
いずれ改稿するかもしれません。
焦ったタルジュは、更にパニックになる。
「ちょ、いや、その、なんで頭を撫でるんですか!?」
おお、すまないと手を引っ込めたラエドは考え込む。答えを待つ間にタルジュは呼吸を整えた。
「なんでと言われても、癖なんだから仕方がないだろう。」
「どうやったらそんな癖が身につくんです・・。」
ケープのフードを深めにかぶり、タルジュは引き気味に睨んだ。人に頭を撫でられる経験のなかった彼は、そんなことをされても反応に困るのだ。
「いっただろう、妹がいると。」
「まったく答えになっていませんよ。」
「背丈が同じくらいなせいか、なにか似ているものを感じるんだ。」
「!!」
(まさか・・・。)
さっきまでのただの焦りが一瞬で不安に変わる。しかし、絶対に顔に出してはいけない。
「妹って・・・・、わたしは男ですよ。」
静かに、慎重に、タルジュはラエドの顔色を伺う。
「そんなことはわかっているさ。そんなに怒ることなのか?」
ラエドは少々面倒くさそうに言った。その言葉に、どれだけタルジュが安堵したとも知れず。
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タルジュが生まれた国には昔から、ある言い伝えがある。
【王族家に生まれし双子の片割れは忌子である】と。
その為、双子が生まれた場合はどちらかを隠す風習があった。
その対象は大抵の場合、次子である。
------「お前は今日からタルジュだ。」
兄の亡骸を、教会に置くでもなく、埋葬するでもなく、部屋のベッドに横たわったままの兄の手を、握り、頬ずりし、キスをし、泣き崩れていた両親。
亡くなって三日目の夜、その姿にいたたまれなくなり、三人がいる部屋に足を踏み入れた。
「と、うさま、かあさま・・・。」
反応を見せたのは父親だった。正気を失った目は今も脳裏に焼き付いている。
「サーフィ。」
久々に呼ばれた自分の名前、嬉しいはずなのに嬉しくない。
なんと返せばいいのだろう、返答に困っているとベッドに顔を沈めて泣いていた母親が頭をゆっくりとあげた。
「そうよ・・・。」
その声は、今にも消えてしまいそうな、しかし音のないこの部屋では嫌に響いた。
「死んだのは、あなたよ、サーフィ。」
頭が真っ白になり、身体の血が逆流していくような感覚に襲われる。
「いま、なんて・・?」
母親の充血した瞳が大きく開く。
「その顔、その瞳、その髪、その肌・・・。そうよ、私のかわいいタルジュは生きてるのよ!」
ギラリとした母親の目が光ったように思えた。母親の言葉に、父親もハッとする。
「そうだ、死んだのはサーフィだ!タルジュは生きている!!!」
いつの間にかつかまれた両手首、ミシミシと折れそうなほど握られる。
「やだ!いたい!!離して!!!!」
激しく抵抗したいのに、恐怖が邪魔をする。
「ああ、可愛いタルジュ、あなたは生まれ変わったのですね。」
母親がサーフィの頬をゆっくり撫でた。
おかしい!くるってる!
(たすけて!だれか!にいさま、にいさま!!!!!!)
しかし、抗うことはできなかった。
忌子として12年間生きてきた少女、サーフィは
この瞬間消されたのだ。
ありがとうございました