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戦況分析とレズ

核心を突く一言を言われたにも関わらず、観測手は動じなかった。

動じずに、城門付近の獣人兵団を眺め続けている。

多分、聞こえてないのだろう。


「ふっへっへ……」


「うわあ、わらってるっすよ……」


流石のハーピーも、その様子には若干引き気味だ。

その声を受けて、観測手はようやく正気に戻る。


「ふへ?あ、いま何か言いました?」


「……観測手がレズなんじゃないかって話をしてた」


「いやあ、身の危険を感じるっす」


二人の言葉を受けて、観測手はパチクリと瞬きをして驚く。


「れ、レズ……って、え、な、なんで?」


「……だって尋常じゃないから、反応が」


「そうっすねえ……」


「い、いやいやいやいや!私はレズとかじゃないですよ?ただ可愛いものが好きなだけです!」


手をバタバタさせながら、観測手は慌てた様子で言い訳を並べた。

狙撃手はハーピーと顔を見合わせる。


「……じゃあ、あの白兎の団長さんの事は好きじゃないと?」


「好きですよ?」


「隠す気ゼロじゃないっすか」


ハーピーの一言に慌てた観測手はこう捲し立てた。


「い、いや違います!私の好きはこう、レズとかじゃなくて!」


「……まあ、観測手がレズでも私は気にしないから」


ボソボソと食事を続ける狙撃手。

しかし、観測手は納得せず「ううー」と唸りながら更に言い訳を重ねようとする。

その様子に流石に申し訳なくなったのか、ハーピーが別の話題を持ち出した。


「けど、あれっすねえ、彼女達が出撃したってことは、また北の帝国が攻めてきたんっすかねえ」


「……最近、多いよね」


狙撃手もその話題に乗る。

伝令役であるハーピーの持つ戦況情報は貴重だ。

場合によっては自分たちの仕事が増える可能性もあるのだから。


「なーんで懲りないんっすかねえ、毎回負けてるのに」


「……うちの国は湿地と森林だらけだし、北の帝国が力を入れてる騎馬兵団とか運用し辛いはずなんだけどね」


「実際、遊撃能力の高いうちの獣人兵団にボロボロにやられてるっすからね」


開戦直後は一時的に国境線を奪われはしたが、それもずいぶん前に奪還できている。

現状ではこちらの軍が優位に戦闘を進めているのだが……。

それでも北の帝国は派兵を続けている。

何か思惑があるのかもしれない。

狙撃手は少し考えると、こう答えた。


「……増えすぎた人口を減らす為に無茶な用兵してるって噂も」


「それが本当なら酷い話っすよ~」


「……観測手はどう思う?」


能天気な観測手ではあるが、軍属経験は比較的長い。

自分たちとは違う視点の話を聞けるのではないかと水を向けてみたのだが……。


「いや、私の想いは何て言うか憧れに近いものであって恋愛感情とかは……」


観測手は話についてきていなかった。

様子を見守るハーピーと狙撃手の前で、まだブツブツと言い訳を続けている。


「けど、けどもし彼女が私の事を好きって言ってくれたらその想いに応える準備は、ええ、ありますありますよ」


言い訳と妄想がまじりあった独り言を続ける観測手を前に、狙撃手の口からため息が漏れた。



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