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観測手とレズ

頭の中で何度も銃声が響く。

何度も。

何度も。


弾丸が入った箱を手探りで引き寄せる。

その動きに反応した小さな鼠が手にじゃれ付いてきた。

それを跳ね除けながら、銃に弾丸を込める。

指先に走る小さな痛みは、無視した。

無視して私は何度も。


……あれ。

これって現実だっけ。

それとも、夢だったかな。


……そうだ、きっと私は眠ってしまっていて。

夢を見ていたのだろう。

早く。

早く眼を覚まさないといけない。

眼を覚まして、彼女の言葉を聞かないと。


強く眼をこする。

そうして、再び眼を開けると、彼女が私を見下ろしていた。


「……ん、私寝てた?」


「はい、ぐっすり眠ってましたね」


ああ、やっばり夢を見ていたのだ。

良かった。

安心した。

どうして安心したのかは、よく覚えていないのだけれども。


「……ごめん、任務中なのに」


「いえいえ、疲れてらしたようですし」


「……確かに、沢山撃ったしなあ」


そう、沢山撃った。

たくさん、たくさん、たくさん、たくさん。

かぞえきれないくらい。

うったんだっけ。


何故か放心している私に、彼女は優しく微笑んだ。



「もう少し、休憩しますか?」



彼女の呑気な言葉に、少し笑ってしまう。

そう、彼女は何時もそうだ。

仕事よりも、楽しいことをするのが優先で。

猫や鳥を観測するのが大好きで。

それで、それで……。


ああ、駄目だ、そうだ。

自分がしっかりしないといけないのだ。



「……いや、いいよ、それより弾ってどれくらい残ってたっけ」


「大丈夫、いっぱいありますよ」


「……そっか」



彼女がそう言うのであれば、そうなのだろう。

安心した。

何の心配も要らない。



「またやりますか?」


「……うん」



彼女の声に従い、引き金を引く。

そうすると、パッと赤い花が咲く。

ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ。

沢山の花が咲く。

そうすると、また彼女の声が聞こえる。

私を包み込むような声が。

また花が咲く。

何も考えなくていい。

何も想わなくていい。

何も観なくてもいい。

まるで彼女と一体になったかのような感覚。

ああ、凄く安心する。

私はこれを望んでいたんだ。

ずっと望んでいたんだ。




「好きでした、ずっと好きでした」


「言いだせずにいたけれど」


「パートナーになった時からずっと」


「貴女の声が好きでした」


「貴女の仕草が好きでした」


「貴女の香りが好きでした」


「貴女が他の人を好きだとわかっても」


「ずっと貴女が好きでした」


「好きでした」


「好きでした……」


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