舞台前
「レディースandジェントルメン。これから行われるのは、五年生最強のクラスの座を決めるクラス対抗戦だー!下馬評では当然Sクラスが一番人気だがぁ、果たしてそのSクラスを破るクラスは現れるのか!?そして最も注目度の高い競技パーティー戦ではどこか優勝するのか!?
ちなみに、この会場には貴族や各騎士団の関係者がたくさん来ているぞ!ここで能力を見せつけておけば将来安泰だ!さあ諸君!クラスのため、そして自分の将来のためにも大いに盛り上げてくれー!」
「「「「「「「「うぉおおお!」」」」」」」」
どうやら今回のクラス対抗戦には実況がいるようである。一年の時はいなかったので、注目度の高い高学年のクラス対抗戦にしかいないのかもしれない。
「さあ!まず最初に行われるのは、皆もお待ちかねのパーティー戦だー!!まずはクラスの代表者同士のハイレベルな戦闘で盛り上がってくれ!対戦チームはー、Aクラス対Fクラスだー!!」
「俺らが最初かよ……」
パーティー戦、マジックキング、バトルキングの三つは、優勝するまでに何度も戦わないといけない上に、戦いによっては大幅に体力を消耗することもある。そのため、試合間隔をできるだけ開けるために一回戦は午前中に終わらせて、決勝戦は午後のオオトリに持ってくることになっている。だが、俺が一年の時はもっと後からだった。いろいろあって順番が変わったのだろうか?
「フローゼたちが最初?」
「あわわ……トップバッターだなんてすごく緊張します」
「やっぱ最初の競技っていうのはこのチームにとっては最悪だな。最初の競技だったとしてもせめて第一試合は勘弁してほしかったぜ」
うちのチームはクラス対抗戦になれていない奴が多すぎる。フローゼは当然初めてだし、俺だって一年のころに一回したっきりだ。その上、ネーアはこの中では一番ベテランにもかかわらず一番緊張している。先に他の競技や他の試合を見てなんとなくどんな感じかつかんでからやりたかった。
俺とフローゼに関してはまだ学校にも慣れていないのだ。いきなりクラス対抗戦の第一種目の第一試合というのはさすがに苦しすぎる。
「おい。あいつらFクラスが最初だってよ」
「そうね。しかも相手はAクラスでしょ。EクラスやDクラスならまだ不意打ちとかで何とかなったかもしれないけど、さすがにAクラス相手じゃ無理でしょ」
「だな。まあせめて試合にはなってもらわないと面白くないな」
「無理無理。だって出場選手はただでさえ落ちこぼれのFクラスの中でもさらに落ちこぼれの奴ららしいぜ。そんなんじゃ試合にすらならないだろうな」
「つーか落ちこぼれとか関係なくね。相手はあのカイルだぞ。万が一にもSクラス相手以外は楽勝だろ」
「まあ第一試合はカイルの無双を見て終わりでいいんじゃないか?ある意味最初はその方が盛り上がるかもしれないぞ」
「確かに。俺は二分で勝ちに銀貨一枚だ」
「なら俺は一分で勝ちに銀貨二枚賭けるぞ」
周りから明らかにAクラスの勝ちを予測している声が出てくる。会場の興味はもはやどちらが勝つかではなく、カイルがどうやって勝つかになっているようだ。終いにはカイルが何分で勝つかに賭ける奴らまで出てきた。
「あわわ…完全にアウェーですね。なんかすごい緊張してきました」
ネーアの緊張は本番になっても直りそうにない。ものすごい青い顔をして今にも吐きそうである。
「これはアウェーとは違うな。そもそも俺たちは敵として認識すらされてない。この会場には俺たちの敵も味方もいないよ」
そう。今の俺たちに対しては敵視する者も味方であるという者もいない。彼らにとっては俺たちが負けるのは決定事項であり、味方としても敵としても見ていないのだ。
「ネーア、やっぱり休む?」
「いっいえ!私もお二人と一緒に戦います。二人よりは三人です!それに、もし負けるとしても、入ってきたばかりのお二人だけにしてはおけません。私も一緒に泥をかぶります」
「そこは譲らないのね」
俺とフローゼはネーアに事態を促したのだが、彼女はそれを受け入れることは無かった。俺とフローゼからするとネーアがケガしないか心配だし、そもそも足手まといだ。彼女が出ないほうが両方にとって得なことである。
しかし、彼女は少しでも俺たちの力になりたいと言って辞退することを徹底的に拒んだのだ。俺とフローゼが彼女の想像通り弱いなら素晴らしい行為だが、残念ながら足手まといである。いいことを言っている上に意外と頑固なネーアを説得することはできず、今の状況に至っているのである。
「ウォル、フローゼは本気出さない方がいい?」
「当たり前だ。その姿のまま一割くらいの力で戦ってくれればいいから。もし出すにしても、三割以上の力は絶対に出すなよ」
フローゼが本来の姿で本気の半分も出したらおそらく相手は確実に死んでしまうだろう。それどころか、能力が本来の姿の時よりも抑えられる人間形態の時でも、本気を出せば相手は即死だろう。安全に試合を終わらせるには、フローゼが人間形態で三割以上の力を出させてはだめなのである。もしそれが破られれば、相手は死亡、運が良くても重症になってしまう可能性が高いからである。
「でも手加減は難しい。それに手加減は面倒くさい」
「力のコントロールの訓練と思えばいいだろ。俺だって手加減するんだからな」
当然俺もフローゼと同様に手加減する。人間形態のフローゼより俺のほうが強いのは、こないだ手合わせして分かった。つまり今回は俺のほうが手加減しなくてはならないということになる。
「お主ら、準備はできたようじゃな。ウォルコット、これからお主の四年間の成果を見せてもらうぞ」
校長がわざわざ俺のところまできて激励を行う。しかし、この幼女が校長というのはやっぱり慣れん。
「それは向こうが引き出せたらということで」
「ふん。相変わらず生意気いいおるわ」
そうして俺は四年ぶりの舞台へと上がった。




