Fクラスの扱い
「こんなこといきなり言うもんじゃないかもしれないけど、なんかFクラスの雰囲気って悪くないか?担任もあんな感じだし、これからあそこで一年半過ごすって結構きつそうなんだが」
「あはは……まあそうだよね。私たちFクラスはみんなもういろいろと諦めている人が多いから。初めから結構雰囲気悪かったんだ」
「俺もよくわからないんだが、Fクラスってどの学年もそうなのか?少なくとも俺が一年の時はそんな風に感じたことは無かったんだが」
「そんなことは無いよ。確かにどの学年でも基本的にFクラスの雰囲気はよくないけど、その中でも五年生六年生は特にそれが顕著なんだ。まあ、ウォルコット君がいたころは一年生の最初だけだから雰囲気があまり悪くなかったとは思うよ。Fクラスで一番雰囲気がいいのは一年の最初だから。そういえば、ウォルコット君は一年の時はどのクラスだったの?」
「俺か?俺がいたのはAクラスだぞ」
「Aクラス!それはすごいね。今うちのクラスにいる人たちは全員Cクラス以上には入ったことがない人たちばかりなんだ。だから、一番すごいのはウォルコット君なのかもしれないね」
「それはどうだろうな。でも、それならFクラスに知り合いがいなかったのも納得だ。まあ、もう四年もたってるから、もしいても気づかなかったかもしれないけど」
「早く昔の友達に会えるといいね」
「まあ……そうだよな」
俺は唐突に休学したからな。その点に関してはこっちも被害者だが、果たしてあいつらがそこら辺を分かってくれるだろうか?特にフィーネ辺りは問答無用で怒っているような気がしてならない。
「どうしたの?もしかしてその人たちとはあまり仲が良くなかったの?」
「いやそういうわけじゃないんだ」
「そうなんだ。それはいいことだよね」
「そうだな。そういえば、話はそれたけどどうして五年生と六年生のFクラスは特に雰囲気が悪いんだ?何かそうなる理由があるんだろ?」
「それはね……五年生六年生だと、もうクラス替えがないからだよ」
「ああそういうこと」
クラスの雰囲気が悪い理由がなんとなくわかった。彼らはもう上のクラスに上がれる可能性はゼロなのだ。つまり、これからどれだけ頑張っても上のクラスに上がれることは無く、最終的にFクラスとして卒業するしかない状況なのだ。また、他のクラスの生徒も四年生までだと下のクラスに追い抜かれないよう頑張るが、もう五年生となるとクラスが変わることは無い。特にEクラスやDクラスの生徒なんかは、上のクラスになれなかったという劣等感をFクラスを馬鹿にすることでぶつけてくるのだろう。対してFクラスには自分たちよりも下がいないという状況だ。他のクラスに対する劣等感もたまっているのだろう。クラスの雰囲気が悪いことには納得である。
「てことは俺も今日の授業からバカにされそうだな。コース別の科目は他のクラスの生徒とも同じになるんだろ?」
コース別の科目は、他のクラスの同じコースを選んだ生徒たちと共に行われる。そのクラスも特進クラスと普通クラスの二つに分かれており、見て分かる通り成績順で半分に分かれさせられる。ちなみにこのクラス分けには自分の所属するクラスのことは関係なく、仮にFクラスでもその科目が優秀なら上のクラスに上がることができる。
コース別の科目による特進と普通のクラス分けは毎年行われる。俺やフローゼは当然今は普通クラスである。しかし、今年の成績が優秀なら来年は特進に入れる可能性があるのだ。
もっとも、このコース別に分かれる授業というのは三年生のころから導入されている。五年生になってからコースを変えたり、もしくはコースを増やしたり減らしたりする者もいるが、大抵の生徒は三年生の時からずっと同じコースだ。つまり、俺とフローゼには他の生徒に対して二年のハンデがあるのである。これでは正直来年特進になれるとは考えない方がいいだろう。まずは他のみんなに追いつくところから始めるべきである。
「まあそうだね。やっぱりどこに行っても五年生でFクラスっていうのは結構きついよ。それにそろそろあれが近づいてるから。やっぱりFクラスの雰囲気はすごく悪くなるよ」
「この時期ってなんかあったっけか?」
「あれ、ウォルコット君は覚えてないの?たしかウォルコット君は夏休み中に休学したんだよね。それなら四年前にウォルコット君も参加してるはずだと思うよ」
「でも四年も前のことだしなー」
「でもこれは結構有名なg……きゃ!」
ネーアは俺たちとの会話に夢中になるあまり、前方から来た生徒に気づかずにぶつかってしまったようだ。
「あいてっ!てんめー、一体どこ見て歩いてやがる。殺されたいのか!?」
大柄であり、それでいてなんともガラの悪そうな男である。一緒にいる奴らは子分かなんかなのか?男三人横並びで、肩で風を切りながら歩いていたのだ。前方不注意だったネーアも悪いが、そんなにスペースをとって廊下の真ん中を歩いているこいつらにだって非があるだろう。
「ごっ、ごめんなさい。久々にするお話に夢中になっていてぶつかってしまいました」
ネーア……その気持ち、俺も若干わからなくはないぞ。ネーアはクラスに友達がいないみたいだからな。久々の会話に夢中になるのも無理はない。思う存分しゃべってもいいんだぞ。
「そんなの関係ねーよ!てめえ舐めてんのか!まさかこのカイル様の名前を知らねえわけじゃねえだろな?この階にいるってことはお前も五年なんだろ?それならお前の名前と五年何クラスか言ってみな」
「わっ、私は五年Fクラスのネーアです」
「ぎゃははは。お前、あの落ちこぼれ集団のFクラスだったのか?道理でさえない奴だと思ったぜ。まあ、その大きな胸だけは褒めてやってもいいがな」
そう。ネーアはさえない見た目をした劣等生なのかもしれないが、その胸の大きさだけは優等生なのである。もっとも、それによる妬みがいじめを加速させる一因になっている可能性は否めないが。
「うう……」
ネーアは羞恥に染まった顔をしている。あんな下品な奴らにかかわるのは嫌だが、それでもこのままにしておくとネーアがかわいそうだし、口には出さないがフローゼたちも早く授業に行きたがっている様子だ。しょうがない。フローゼたちのためにも、ここは俺が一肌脱ぐとするか。




