魔の森の肉と別れ
今日は二話投稿です。
「これがお主の言う魔の森の肉じゃよ。まあ、これでもこの森では普通の部類に入る強さではあるがな」
「これが普通のレベル……こんなのがたくさんいるようなところで生活なんて絶対無理だろ!」
そういったカリウスと俺の目の前にいるのは一匹の竜。竜にはいくつかの階級があり、昔母さんたちが倒した下級竜は竜の中では一番下の階級(劣等竜ともいわれるワイバーンは竜の部類には入らない)である。階級には下級、中級、上級がある。
今俺たちの目の前にいるのは上級竜だ。上級竜は基本的にSランク相当の力を持つ。俺たちの目の前にいる上級竜もその例にもれずSランクの力を有しているということがわかる。あれが普通のレベルだとすると、ぎりぎりAランクでしかない俺は完全に雑魚の部類に入ってしまうことは免れないだろう。
「この森ではお主のようにAランクの力しか持っていない者はほとんどが被捕食者の立場になるぞ。この森では植物〈Aランク〈Sランク〈Sランクの中でも特別に強い奴、といった感じじゃ。つまりお主はこの森ではいつ狩られてもおかしくない存在ということじゃな」
カリウスはそう言って笑う。
「いや笑い事じゃないだろ。Aランクが雑魚扱いってどんな森だよ。この森のレベル高すぎない?」
「それは当然じゃ。さっきも言ったようにこの森の空気に耐えられる最低ランクがAランクなんじゃ。この森にはAランク以上しか住めないということは当然それが最低ランクであり、それ以上の生物がたくさんいるのじゃ。つまり今のお主には格上と同格しかいないことになる。お主の修業には最適じゃろ?」
「いやハードすぎでしょ。こんなのむりげーにもほどがある。って、ちょっ、ちょっと待った。つまり俺が一人でこの森で過ごせるようになるということは、俺の能力がSランクにならないといけないっていうことか?」
Sランクは文字通り異次元の存在だ。今まではとんとん拍子に強くなれたが、Sランクに上がるとなると今までとは比べ物にならないような壁を突破しなくてはならない、と聞いたことがある。
「いやそうは言わん。いくら敵がSランクだとしても、Aランクでもトップレベルの強さと知恵を持っていればなんとか戦えるだろう。そうでなくとも逃げることはできる。お主がそうなったと儂が判断すれば、それで儂は一度国に帰る。その後は好きにすればいい。ここで修業を続けるでもいいし、儂と一緒に王都に帰るのもありじゃ。ただ、この森から帰るときは絶対に一度王都によって行くこととしてもらう。学校のことなどもあるから、ちゃんと一度王都に帰ってくるのじゃぞ」
俺だってここまで言われればわかる。この森での修業を終えるには何年もかかることは確実だ。俺がここで修業するのは百歩譲って理解した。しかし、俺の相棒はここで修業することができない。
「一度ロークスの森に行っていいか?俺の眷属をそこに送っておきたい。さすがにローマが俺と一緒にこの森で修業することは不可能だからな」
俺がこの森で生活していくことができることはわかった。しかし、さすがにローマがこの森で暮らしていくことは不可能だ。それならばローマを一度両親のところに送って暮らしてもらうしかない。俺はこの森で、ローマはロークスの森で修業するのがお互いのためになる。
「なるほど。確かに眷属がいるならその眷属は別のところで修業させた方がよかろう。よし分かった。それなら儂が送ってやる。魔の森はシルフォード王国からかなり離れたところにある。お主の魔力量ではロークスの森まで行けるかどうか怪しかろう。とりあえず儂がロークスまで〈テレポーテーション〉するから、そのあとお主がその眷属を預けて、また儂と一緒にこの森に戻ってくるのじゃ」
「それじゃあそうしますか」
俺とカリウスはロークスの森に向かった。
『くまくまー!』
「悪いなローマ。だが、これから俺の修業するところはお前が一緒に射られるところじゃないんだ。ローマはずっと外に出られなくなるぞ」
『くまくま』
「それでもいいって?でもだめだ。ローマ、俺はこれからあのくそったれな森で強くなるために修業に行かなければならないらしい」
『くまー?』
「そうだ。だからローマ、お前もこの森で強くなってくれ。いつかちゃんとここに迎えに来る。だから、それまで両親とともに暮らして強くなってくれ」
『くまー、くまー』
「ローマ、男の子が強くなるといった時は黙って見送るのが女というものです」
ローマの母親がローマをやさしく諭そうとする。
『くま』
「そう。やっぱりえらい子ね。それなら私たちも修行しましょうか。ローマにはフェアリーベアーのメスとしてまだまだ教えていないことはたくさんあるから」
『くまー』
ローマは何かを決心したような顔になる。
「ええそうね。お父さんとお母さんと一緒に頑張りましょ。フェアリーベアーのことだけじゃなくその他のこともいろいろと教えてあげるわ。それに、ローマが外で経験してきたことも聞いてみたいしね」
『くま』
「じゃあローマ、俺もそろそろ行くから。今度会うときはお互い大きくなってから会おうぜ」
『くま!』
ローマはそう言って片手を上げる。俺もそれに倣って片手をあげて応じた。こうして一人と一頭はそれぞれ強くなるために一度離れ離れになったのであった。




