クララの誕生日
登場人物紹介
クララ ピアニスト
悠馬 すでに亡くなっているクララの恋人
舞台 雪国の12月30日の午後九時ごろ。クララがピアノを弾いていている。外は雪が降っている。
玄関の開く音がする。
ガチャン
クララ あら、悠馬さん。いらっしゃい。ずいぶん遅かったようだけれど、なにかあったのかしら?
悠馬 いえ、ちょっと遠回りしただけです。
クララ そう、もう今年も終わりですね。
悠馬 はい。貴方は確か12月31日生まれでしたよね。もうすぐ誕生日ですね。それを祝いに来たんですよ。
クララ ありがとうございます。私も悠馬さんの声を聴くと安心します。悠馬さんが亡くなってもう2年もたつのですね。私はいまでも時折悠馬さんが作曲した曲を弾いています。もう、新しい曲を作曲することはしないのでしょうか?
悠馬 あまり気が向かないので。別にただ暇つぶしでやっていただけですから。
クララ まあ、謙遜して。
舞台暗くなる。照明が消える。
クララ あら、これはいけない。
悠馬 私がしますよ。
クララ それはわるいですね。でも、お言葉に甘えて
悠馬が舞台から去る
クララ 悠馬さんがお亡くなりになったその日を、私は今でも覚えています。
クララの独り言が悠馬には聴こえない。
5分ほど時間がたち、悠馬が照明をつける。
クララ あら、明るくなった。
悠馬 明るくなりましたね。私が死ぬ前に見た風景もこのようなものでしたよ。
クララ まだ雪はやまないのですね。
悠馬 そうですね。
クララ 窓の外からオーロラが見えますね。いつみても不思議なものです。
悠馬 ええ。
クララ ピアノを弾きましょう。そしてまた明るい朝が来るのを待ちましょう。
ピアノの音が響き渡る。
幕が閉じる。