Unforgetable
眼前には親友がいる。ビルの屋上の一番端に突っ立っている。彼女はどのように私を見つめているのだろうか、顔が霞んで良くわからない。冷たくて鈍い痛み。またいつもの感覚だった。
吹き付ける冷たい風と暗くて重い鈍色の空に、私の頭は押し付けられているような感覚を覚えた。
「お願い……やめて……」
震える声でまた私は呟く。何度同じことをここに立って言えど、眼前の少女はいつも表情を冷たくしたままだった。まるで感情のない人形のように。
「ねぇ……私もう疲れたの……でも私、頑張ったよね……そうだよ……でも……もう………………疲れたの……幸せになんてなれない……分かったよ」
まただ。私は彼女の顔が直視できないで、ただ俯いたままですすり泣くことしかできなかった。こんな風に苦しそうにしている彼女を、ああなるまで放っておいたことをいつまでも悔やんでいる自分が情けない。
「ね……そうでしょ……私がいる事がみんなを悲しませてるって……私知ってるから……誰ももう……悲しませたくないの……分かってよ……」
頭がガン、と鳴った。私は彼女の境遇を思うた。小さな頃から片親と暮らしてきた彼女は、ロクに愛情を受けずに育ってきた。友達はいない。彼女は母親の再婚相手には邪魔だと思われ、そいつの連れ子もまたそう思っているらしいことを知っていた。それからずっと、独りで、誰とも関わらないよう生きてきた。
彼女は、生きているのが死ぬより強いと常に言っていた。生きていればいい事がある、といつも必死に思い止めさせていたが、それが全く意味を為さなかったというのはこの通り明らかだったのに。
「ごめんね……」
彼女はそう言い残して、私に背を向けた。その背は追い風に吹かれた後、視界から消えた。そして、あれほど強く吹いていた風はぴたりと止んでしまった。
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