チートの制限
お城のある街に付いた。あっという間に到着した。
「何だよこの速さ!」
遥か遠くに見えた城まで、あっさりと到着した。
これなら勇者にもなれるだろう。そして、門に入ろうとして、止められた。
テンプレのように兵士が槍をこっちに向けて、止まれ!と声をあげる。
「あ、怪しい物じゃないです。街に用事が、入れてくれないっですか?」
目を逸らし、冷や汗を流しながら挙動不審に答えた。
コミュ力のチートも欲しかった……。
前世なら職務質問されてもおかしくないコミュ力にも関わらず、門の兵士は槍を立てて警戒を解いた。
俺がまだ子供だった事と、可愛らしい容姿をしている事が良かったようだ。
「よし解った。お嬢ちゃんの同行人は誰だい?」
女の子と勘違いされているらしい。だが、ここはあえて否定はしない。
どこの世界でも、女の子の方が甘くされる物なのだから。
「お兄さんかっこいいですね!」
そう言うと、兵士は明らかに照れたように顔を赤くしてありがとう、と答えた。
ロリだった。ショタかもしれないが、都合のいい事には変わりなかった。
「あ、あの私は一人旅で……もう疲れてて休みたくて、その……」
もう疲れてるから休みたいんです、と可愛らしくアピールしてみた。
「一人旅?そんな、お嬢ちゃんみたいな小さな子供が一人で旅なんて感心しないな……。同行人が居ないなら護衛でもいるかい?」
うざい、早く通せよ……。
「あ、あの私は本当に一人で、その。もう休みたいんですけど……」
「誰かからの紹介状、入門証、通行許可証はあるかい?」
何……だと?
「えっと、もう一度言って貰えますか?」
「紹介状はあるかい?お嬢ちゃんの身分を証明する内容と、この街で何かをするなら、紹介状があるはずだよ?」
そんな物あるわけがない……。十四年この世界で生きてきたが、部屋へ引きこもってた俺は箱入り息子で、そんなシステムがあるのも今しったばかりだと言うのに……。
「……他のでお願いします」
「……入門証はあるかい?この街の住民であったり、過去に入った事があれば再発行は簡単なんだが……」
「…………さらに他のでお願いします」
「…………通行許可証はあるかい?この街が目的ではなく、数日立ち寄るだけ、という証明書なんだが」
「…………あ、あぁ!アレですね」
「そう、アレだよ、アレ……」
「あの、四角の白い紙ですよね?」
世界の紙の八割は四角くて白い紙だ。
「いや、黄色い羊皮紙のはずだが……」
「「……」」
「何も無いけど、通してくれる訳にはいかんかね?」
「それで通すなら、俺達門番はいなくてもいい事になるわけだがね?」
ハッハッハ、と二人で笑い合って、俺はゆっくりと後ろを向いた。
全力で走って逃げた。
「……!?、こら、待ちなさい!お嬢ちゃん、一人で外に行くのは危険だから!戻って来なさい!」
このまま不審者として捕らえられる方が危険な気もするのでお断りします!
うん、きっとお城があるような街にいきなり入ろうとするのが失敗だったんだ。
五分程走ると門番は見えなくなった。
『カミカのパンツの効果が切れました』
文字が視界の端に流れると同時に、速度が急激に落ちていく。
パンツのチートはもう無い。
あたりを見渡すと、いかにもモンスターが出そうな森の中だった。
帰り道も解らない。
「考えて走れば良かった!!」