チート能力
開いて頂きありがとうございます!
太陽の熱でちりちりと体を焼かれて目が覚めた。
辺りを見回すと、草原の中。少し遠くの位置にお城が見えた。
軽く吹き付ける風が心地よい。
「……なんで俺はこんな所に」
ここはどこだ。
俺は誰だ。
ぼんやりとしている頭を振って、記憶を思い出そうとする。ずきり、と頭が痛んで、俺は自分の事を思い出した。
名前はシズム。名前だけは前世と同じだ。
シズム=フェティ=アンダーウェア。
アンダーウェア家は田舎の国の貧乏貴族で、俺はそこに生まれて十四年間過ごした。
外見は、母親に似たようで、女の子に間違えられるくらいに可愛らしい方向に整っていた。
前世の俺には男の娘属性は無かったため感動は薄いが、かなり整っていたんだと思う。
その容姿が原因で、上級貴族に買われたのだから……。
そして、上級貴族の所へと移送される途中で馬車が転倒して今に至る。
生まれてから今までの十四年間。そして、前世の記憶とチート転生した青い世界の記憶。
全てをセットで思い出した。
チート能力の説明も何もなく落とされてしまった。
ひどい、転生担当者は相当なSじゃないだろうか。
状況を整理しよう。
武器、無し。
防具、布の服。
魔法、使えない。14年間使った記憶が無い。
嫌な汗が流れる。
腹も減った。金もない。
家に戻ったら、また売られるだけだろう。
かといって上位貴族の所へ、よし、来い!と掘られにいくわけにもいかない。
冒険者、いや無理だ。
肌はすべすべで病的な程白く……腕に力を入れて曲げてみたが筋肉が殆ど無い。
自分の身体を撫で回す。
同年代の少女と殴り合っても負けそうだった……。
「どうすんだよ……これ」
何か使える物はないか、とポケットを漁ったら、一枚の布が出てきた。
あの美少女だった転生担当者のパンツだった……。
装備……履くんだろうか?
いや、美少女が履いていたパンツを上書き(履く)なんてとんでもない!
俺は考えた結果、被る事にした。
甘酸っぱい美少女の使用済み下着の芳香で、多幸感に包まれる。
芳香を逃さぬよう、ちょうど脚の間に触れる部分が鼻に当たるように、と装着して深呼吸した。
「やはりこれが正解か……」
世界の真理を感じる……。
「違うからねっ!?」
転生担当者の声が聞こえた。
「やっぱり被ったんだねっ!久しぶり、ボクは君の転生担当者のカミカだよっ」
パンツから声が!?
カミカが目の前にホログラムで現れた。
「違うよっチートの説明をし忘れたような気がしたから、連絡を取ろうと思念を飛ばしてるだけだよっ!」
「そうだ、チートだ。俺のチート能力は何だ?」
カミカは、パンツを被った俺を蔑んだ目で見ていた。
軽蔑の眼差しでいる美少女のパンツを被っているのだと思うとゾクゾクした。
三次元も中々仕事をするものだ。
「君のチートは、君が興奮を覚える異性の下着で色々効果が発揮される能力だよっ」
「……下着を能力に変える?」
「そう、攻撃力アップだったり、防御力アップだったり、人を癒やしたり。色々なチート能力が使えるようになるんだよっ」
「使い方はどうすればいいんだ?」
「解かんないよっ好きに使えばいいんじゃないかなっ、効果を探して行くのも楽しいと思うよっ」
「……下着の使用制限はあるのか?」
「一日休ませれば、また使えるようになるよっ。ただ時間が経つと効果は劣化しちゃうけどねっ一枚の下着で一回の奇跡。十枚あれば毎日十回の奇跡が起こせるねっ」
カミカがじゅう!と両手を広げて高いテンションで言った。
「下着には付けていた人のエネルギーがあってねっ人によって、起きる効果が違うからねっ」
「なるほど……」
「あと、下着を使って、アレな事はしちゃダメだよっ」
「何だと!?」
「……してもいいけど、君のチートは君が興奮を覚える下着だよっ自分で使用済みの下着により興奮を覚えられるなら別だけどねっじゃあ、頑張ってねっ」
そう言うと、カミカのホログラムは消滅した。
「下着を使ったチート能力か……」
強いのか弱いのかいまいち判断が付かない……。とりあえずやってみるか……。
俺は試しに、とカミカの下着を握りしめた。
『一時間の間、敏捷性と体力が向上します』
一瞬視界の片隅に文字情報が流れた。
身体が軽い。軽く走ってみたら、あっという間に視界が流れた。
前世で世界一速い男よりも間違いなく早かった。これは人間の速度じゃねえ……・
勇者にでもなればいい、と言われただけの事はあるチートだった。
「よし、冒険者でもしてみるか!」
そして俺は遠くの位置のお城を目指して走りはじめた。
読んで頂きありがとうございました!