第2話 どきどきバーベキュー
なんだか靄がたちこめてきた小道をノロノロと進んで行くと、開けた場所に出た。
「あっ、あったよ。アレじゃないかな?」
リオが見つけた一軒家の別荘は、よく洋画でみるような伝統的な洒落た山荘風の二階建ての白い建物だった。まるで外国の別荘にでも来たみたい……。
「よっしゃあー! ここだな。運転ご苦労さん。早く中に入ろうぜ!」
車を停めてバックドアから荷物を降ろすと、リオたちは別荘へ向かった。
リオとアイリが着くよりも早く、ハルキとリョウさんはたくさん荷物を抱えて玄関に急いで行った。リオたちの荷物のほかにも、途中で買った食材や飲み物などをクーラーボックスに入れてもってきたので、何回か往復しなきゃならないのだ。
「リオとアイリさんは、部屋で休んでいてよ」
ハルキがすれ違いざまに声をかけていった。
「うん、ありがとっ!」
でも、休むより先に別荘の内装をちゃんとチェックしなきゃね。もし電気がつかなかったり水が出なかったりしたら困るもん。
玄関を入ってすぐ壁際の照明スイッチを入れると、ホールが明るく照らし出された。
「へぇー、レトロなインテリアなのに、すっごくキレイでピカピカだよー! アイリね、あんまり山奥だったからぁ、虫が出そうな古い変な丸太小屋だったらどうしようって心配してたんだぁー」
「ええ、キッチンだって立派なのがついてるわ。水もお湯もちゃんと出るし、ひと安心だね」
「よしっ。アイリは二階の部屋を見てくるねぇー」
アイリはホールから階段を上って行った。リオは一階の他の部屋を見て回った。家具は備え付けてあるし、洋間、和室、トイレにお風呂もきれいで問題は何もなさそうだった。
窓から庭をみると雑草などはなく、芝生がきれいに刈ってあった。フーン、しっかり管理されてるんだ。これなら大丈夫ね。
遅くなった夕食は、別荘の庭でバーベキューをしてみんなで楽しく過ごすんだッ!
安心したせいか、なんだかお腹が急に減ってきたリオは、食材の入ったクーラーボックスをキッチンに移動させて、さっそく下準備を始めることにした。
「クィーンサイズのベッドだったよぉ。二階にシャワーまでついてるの! 来てよかったねー、リオっ」
「う、うん。えっと、そうだ、バーベキューの準備しよっか……」
アイリが意味ありげに微笑みかけていた。
そして、芝生のお庭でバーベキューがはじまった。
はじめは女の子であるリオとアイリが焼いていたんだけど、リョウさんがこういうのは男の料理だと持論を言いだしたのでお任せした。もちろんハルキも手伝わされていた。アイリはスラッとしたやせ型なのにすごい勢いで食べていた。リオも負けずにおいしく飲んだり食べたりした。
「まだ、ぜんぜん食べてないじゃない、ハルキったら……」
ハルキは、両手に菜箸とハサミを持って鍋奉行ならぬ肉焼き奉行と化したリョウさんに、肉の焼き方を指導されっぱなしだったのだ。
「しょうがないなぁ……。はい、アーンしてッ」
リオは上手に焼けていたカルビをフーと吹いてさますと、お箸でハルキの大きく開いた口に放り込んだ。
「うん、おいしいよ」
ハルキがモグモグ食べるとうれしそうにニコリと笑った。
「あー、リョウー、アイリもするぅー」
アイリが網の上の焼きかけの肉に箸を伸ばそうとした。すると、リョウさんはアイリの出した箸を下から菜箸ですくい上げ、跳ね除けるようにしてお肉を守った。
「それは半焼けだ……、焦るな!」
もはや、リョウさんは奉行どころか武将と化していた。
「あ、本当だ。まだ全然火が通ってないよ」
リオは網をのぞき込んで言った。
「もうヤダぁー、リョウなんて……。いいもん、今夜はリオと一緒に寝るからねぇーだ!」
アイリが頬を膨らませて拗ねるように言うと、
「……な、エエーッ!!」
リョウさんだけでなく、ハルキとリオも一斉に大声を上げたのだった。
みんなで顔を見合わせて笑った。
「ほらぁー、それじゃぁ、缶ビールならいいんでしょー?」
いきなりアイリは一口飲むと、口移しでリョウさんに飲ませてみせたのだった。
びっくりしてリオが目を丸くしていると、ハルキがうらやましそうな目で見ていた……。
リオは頭に血が上ってコクッと喉を鳴らすと、震える手で冷えた缶ビールを持ってプルタブを開けようとした。
緊張でガチガチに力んだ指先がうまく動かなかった。そっとハルキがあけてくれた。
リオはひと口分だけ含もうとして缶に唇をつけた。もう心臓がとび出そうなくらいドキドキするッ。
「あれっ? ねぇ、あそこ見てーっ! リオっ、後ろっ!」
突然、アイリが素っ頓狂な声を上げた。
「んっ、ゴクッ、ゴクゴクッ、ケホ、コホッ――! な、なに、まったくもう、どうしたのよ?」
むせて涙目になりながら言った。苦~いっ! 思いっきり飲み込んじゃった!
「ほらぁー、あそこの木のそばよぉ。目が赤く光った。だれかいるわっ! 人影だって見えたんだからぁー」
「どこに? 何もいないじゃない。いても、たぶん野生動物じゃないの? まだ山奥には鹿とか猿が住んでいるんだって聞いたけど」
振り向いて、アイリの指さす方向をジッと見たけど、当然だれもいなかった。
リョウさんは肉の焼き加減のチェックで忙しそうだった。ハルキはがっくりと肩を落としてかなり落ち込んでいた。
照明が届かない場所は、ただ真っ暗な森が広がっているだけだった。




