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「は?!なんだよそれ!」

「ちょっ…陸、声が大きい」

「声も大きくなるだろ!いくらあの人達だって、葵に手ぇ出すなんて許せん!」

「だからたぶん一時の気の迷いだよ、ある程度したら飽きて他の人に向くだろうから、大丈夫」


翌日。

登校してきた陸に、早速昨日の事を話した。


できる限りの事とはいえ、今日から毎放課後迎えに来るって言うし、陸にだけは言っておかないと。

そう思って話をしたんだけど、まさかここまで大きな反応が返ってくるとは思わなかった。


すぐに元の生活に戻ると僕はみてる。

でも陸はそう思わないらしい。

考えすぎだよ、絶対。


「こうなったら…、葵!」

「ん?」

「奴らが来る前に教室を出るぞ!」

「え?」


陸の目が燃えている。妙な使命感に燃えている。

呼び方も昨日までは“先輩”だったのに、今では“奴ら”に変わってしまった。


…それにしても、なんでみんなこんなに強引なんだろう。


陸にばれないように、ひっそりと溜息を吐きだした。







そしていよいよ運命の時が迫ってきた。


「いいか?葵。HRが終わったら、猛ダッシュで教室を出るんだぞ?」

「う…、うん」

「いつもの通りに昇降口に向かったら絶対に途中であいつ等に出くわすから、特別教室棟の方から回って昇降口に行く。OK?」

「……うん」


なんだかなぁ…。

もしかして毎日逃げ回る事になるの?

思わず遠い目になってしまう。


僕の肩には、既に通学バッグが装着されている。もちろん陸の指示だ。

一秒さえ無駄にしてはいけないらしい。これじゃまるで自衛隊だよ。


「はい、じゃあ今日は終わり」


担任の田中先生の、いつもの締めの言葉。同時に陸が「今だ!」と僕を促す。

挨拶もそこそこに教室を飛び出したら、視界の端で田中先生が呆気にとられているのが見えたけど、もう僕にも何が何やら…。


とりあえず言われるがままに教室を出て、特別教室棟の方へ向かった。

授業も終わったこの時間帯、さすがに特別教室棟はひとっ子一人いない。

ちょっと不気味に感じるのは僕だけだろうか。


こっちを回って昇降口へ行くとなると、ほんの少しだけ遠回りになる。だからここを通ろうなんて奇特な考えを起こす人はいない。

でも、普段どおりの道順で昇降口へ向かうとなると、二年生の教室がある上の階から下りてくる名波先輩と、間違いなく鉢合わせしてしまう。

だからこその回り道なんだけど…。


「…ハァ…」


溜息も吐きたくなる。

昨日、図書室なんかに寄らなければよかった。

そんな事を言っても後の祭りとわかっているけど、言わずにはいられない。







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