表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/36

26

そんな陸を見送って、廊下で先輩を待つ。

いざ真相を聞く段階になって、今度はドキドキと緊張している。本当に忙しない。少しは落ち着かなきゃ。

そう自分に言い聞かせている所へ、名波先輩が来た。


それも、何故か今日に限って松浦先輩と一緒に…。


まだ教室に残っているクラスメイトは、噂の二人の登場にざわめきだしたけれど、僕は二人の様子を見てホッとした。

確かに二人共顔に青あざが出来ている。でも、いつもと同じ様子だったから。


「葵ちゃん、今日はエンも一緒ね」

「たまには俺も仲間に入れて~」


僕が満面の笑みで頷いたのは言うまでもない。


その後、校舎から正門に向かい学校を出た。

チラチラと二人にバレないように様子を窺い見る。相変わらずのやり取りを見て、本当に安心した。


「…葵ちゃん、この傷が気になるみたいだね」

「………え…」


見ていたのはバレバレだったらしい。僕に隠密行動なんて出来るわけないか。

なんて言えばいいのかわからずに困っていると、先輩達は苦笑気味に笑いを零した。


「今日、なんでエンと二人で来たのか。それは、葵ちゃんが俺達の噂を聞いて心配していると思ったから」

「え?」


名波先輩の言葉に、目を見開いた。


「確かに殴り合いの喧嘩をしたけどねぇ、でもまぁ、それこそ男の熱き友情でしょ。ね、耀ちゃん」


そう言って、松浦先輩は名波先輩の肩に手を置いて楽しそうに笑っている。名波先輩も名波先輩で、「あぁ」とかなんとか、やっぱり楽しそうに頷いている。


僕は殴り合いの喧嘩なんてした事がない。

それも、仲が良いのに殴り合いだなんて…。

でも、そんな喧嘩をしてもこうやって仲直り出来るのは、本当にお互いを信頼していなければ出来ない事だ。

凄いと思う。

そして、そんな先輩達が殴り合いに発展するような喧嘩をする原因とは、いったいなんだったんだろう。


「耀ちゃーん、ノノちゃんが不思議そうに見てるけど」

「なんで喧嘩したのか疑問なんだよね?葵ちゃんは」

「え、あ、う…」


咄嗟に頷けなかった。

馬鹿みたいな僕の反応に、二人は声をあげて笑いだす。

ちょっと恥ずかしい。

熱くなった顔を隠そうと俯きながら歩いていると、笑いを押し殺した名波先輩は、


「それは秘密だよ」


からかい混じりにそう言った。


「恥ずかしくて葵ちゃんには教えられないの~」


松浦先輩まで冗談めかしてそう答える。

誰にだって言いたくない事はあるだろう。

だから、僕は


「先輩達が仲直りして良かったです」


いちばん言いたかった事だけを伝えた。

それを聞いた先輩達が嬉しそうに笑ったのを見て、僕の胸の奥がホワリと温かくなった。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ