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そして放課後。

いつものように部活へ行く陸を見送ってから、屋上へ向かう。


今日一日で噂の的になった事を考えれば、明日からは登校中に名波先輩と会わないようにした方がいいかも。

そんな事を考えながら、屋上へ通じる扉を開く。

途端に、外から校内へと爽やかな風が吹き抜けた。


放課後の屋上は、放課後の図書室と同じくらい人がいない。

だからこの場所を指定したけど、それはどうやら正しかったらしい。

今日も今日とて、誰ひとり姿が見えない。

安心しながら扉を閉めて、給水棟の影へ回る。


「はろー、ノノちゃん」


やっぱりいた。

胡坐をかいて座り込みながら、僕を見上げて笑顔で手を振る松浦先輩。

ピンク色の髪が陽に透けて、キラキラと綺麗な光陰を浮かばせている。


「遅くなってすみません」

「違う違う。俺は1時間前からここにいるだけだから、ノノちゃんが遅かった訳じゃないよ~」

「…一時間前ってまだ授業中のはず…」


笑顔が引き攣った僕を誰が責めよう。


固まっていると、先輩は自分の隣をポンポンと手で叩いた。そこに座れという事だろう。

とりあえず、先輩の発言には目をつぶる事にして、そこに座る。

三角座りをしてしまうのは、なんとなく緊張しているから。

それが可笑しかったのか、隣で松浦先輩がクスクス笑った。


「で?耀平がどうしたの?」

「なッ?!」


驚きすぎて、物凄い勢いで振り向いてしまった。

なんで名波先輩の事だってわかったんだろう。

僕が目を剥いて凝視すると、今度こそ先輩は声を出して笑いだした。


「そんなに驚かなーい。だってノノちゃんがわざわざ俺に相談って、耀平の事しかないでしょ」

「………」


鋭いというか、確かにというか…。

それでも、尊敬の眼差しを向けてしまうのは止められない。

言われてみれば「そうか」と思うけど、実際にそうやって気が付くと言う事は、やっぱり先輩の洞察力があるからだ。

でも、


「それ以外にもー、苑先輩のスリーサイズは?とか、苑先輩の初チューはいつ?とか、そういう質問も受け付けてるよ~ん」


なんて言っている姿を見てしまうと、尊敬は宇宙の彼方へ吹っ飛んでしまい脱力する。

そもそも、僕は先輩を名前で呼んだ事はない。


ふにゃりと力の抜けた体を、背後の壁に寄りかからせた。

もう三角座りとかする気分じゃない。両足を投げ出して座ってしまえ。

緊張も遠慮もなく、そのとおりに座りなおす。







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