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もう何が何やら…、頭の中が初めての知識でパンパンに膨れ上がっている感じ。
そろそろ容量オーバーしそう。
「よし。じゃあ一度上に戻ろっか。耀ちゃん達も車の熱を下げる為に一旦休憩するだろうし」
「はい」
松浦先輩に手を掴まれてガードレールから降りる。
そして、さっきのランサーまで戻った。
「純くーん。悪いけど耀ちゃんとこ行ってくれる?」
「はいはい任せて下さい」
さっきのお兄さんが、やっぱり優しい笑顔で僕達を迎えてくれた。
さっきと同じように車に乗り、上の駐車場に向かって走り出す。
「苑さんは今日は走らないんですか?さっき俺と一緒にいた奴が、苑さんのグリップ見たいって言ってましたよ」
「う~ん、そうだね~。後で走るかもねぇ」
のんびりと答える松浦先輩。
そういえばここに来る時に総さんが、名波先輩と松浦先輩は走り方が違って、それぞれの帝王だって言ってた。
という事は、松浦先輩はグリップ走行の帝王って事なんだよね。
それを思い出して、隣に座る先輩の袖を掴んだ。
「あの、松浦先輩。先輩も走って下さい。僕の事、本当に気にしなくていいですから」
そう告げた僕の必死さが伝わったのか伝わっていないのか…、少しの間こっちを見たまま固まった松浦先輩は、「参ったねぇ」と呟きながらグシャリと髪をかき上げた。
結局どうするつもりなのかわからないまま、車は駐車場に入っていく。
ランサーが向かった先に、黒の34と赤の34、そして白のワンビアがボンネットを開けて停車していた。
「はい、到着です」
「サンキュ、純君」
「ありがとうございました!」
「いえいえ、どういたしまして」
相変わらず明るい純さんに頭を下げてから車を降りると、いち早く名波先輩がこっちに気が付いて歩み寄ってきた。
「純の車に乗せてもらってたんだ?」
「はい!」
離れていたのは数分なのに、名波先輩の顔を見るのが久し振りに感じる。
松浦先輩が降りた後に軽くクラクションを鳴らしたランサーは、また道路へ出て下の方へおりていった。
「どうだった?」
「凄い迫力でビックリしました」
名波先輩にそう答えると、楽しそうに笑われた。
そして、ここでもやっぱり周囲の人の視線を痛いくらいに感じながらも、車に意識を移す。
「…あの…、なんでみんな、ボンネットを開けてるんですか?」
素朴な疑問だ。
だって、走り終わった人達は、ほとんどがそうしている。
僕の疑問には、隣に来た松浦先輩が答えてくれた。なんだか走り屋の先生みたいだ。
「これはね、エンジンの熱を早く冷ます為だよ」
「熱?」
「そう。通常の走り方なら何も問題はないけど、レッドゾーンぶっちぎるような走り方をした後だと、水温がアホみたいに上昇しちゃうのね。それが下がらないと次の走行が出来ないの。無理するとエンジンを痛めちゃうし」
「大変…なんですね」
その返しの何が可笑しかったのか、松浦先輩や名波先輩、更には総さんや加瀬さんまで笑いだした。