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友達のじゃなければ…、どういう事?

と思ったけれど、違うと言ったのはその部分じゃなかった。


「あれ、ワンエイティーじゃないよ~」

「え?」


間違えて覚えてた?

固まる僕の肩をポンポンと叩いた松浦先輩は、白のワンエイティー(に見える)車を指さしてこう言った。


「フロントはワンエイティーだけど、ほら、今リアが見えるでしょ?」

「…あれ…?」


後ろから見ると、シルビアに見える。…どういう事?


「あの車の大元はシルビアでね、フロントにワンエイティーの顔をくっつけてるの」

「そんな事、出来るんですか?!」


ビックリした。だって、別の車に別の車をくっつけるなんて…。


「シルビアとワンエイティーは兄弟車だからね~、外見は違うけどサイズが同じ」

「……凄い…ですね」

「ちなみにあれは、前がワンエイティーで後ろがシルビアの“ワンビア”。それとは逆に、前がシルビアの顔で後ろがワンエイティーの“シルエイティー”っていうのもあったりする」

「………」


学校の授業よりも難しい。混乱してきた。

そもそも車って、買ったものをそのまま乗るんじゃないの?

レゴみたいに自分でくっつけて組み立てる物だった?


そうこうしている内に、名波先輩達の車は駐車場を出て下へ走り去っていった。


「ほらほらノノちゃん。俺達もベストポジションに向かいましょうか」

「ベストポジション?」

「そう、通称“ギャラリーコーナー”。いちばん見応えのある場所だよ」


見応えのある場所。

それはもちろん、走りの見応えがある、という事なんだろうけど、なんだかもうここが公道だという事を忘れてしまいそうになる。


松浦先輩に背を押されて促されながら歩き出し、そのまま“ギャラリーコーナー”へ向かうのかと思ったら、違った。何やらまた見知らぬ人の所へ向かっている。


「純く~ん、7コーナーまで乗せてってー」

「うわっ、苑さん!OKです、すぐ出られます!」


地面に座り込んでいた年上っぽい男の人は、松浦先輩の言葉に素早く立ちあがり、すぐ横にある真っ黒のランサーエボリューションに乗り込んだ。

松浦先輩は、勝手に後部ドアを開けて乗りこんでいる。


「はいノノちゃんも乗って乗って」

「お…邪魔…します」


恐る恐る乗りこみドアを閉めると、すぐさま動き出す走り仕様のランサー。

名波先輩の車もそうだったけれど、この車も内部に太いパイプのような物が通っている。

手を伸ばしてそれに触れたら、隣にいる松浦先輩が教えてくれた。


「それね、ロールバーって言って、車が転がって上下逆さまになった時、屋根がグシャって潰れないようにする為の物。中の人間が怪我をしないようにね。簡単に言うと、車の補強」

「………上下逆さまって…」


絶句。

走り屋ってそこまで危険なの?

そんな事を先輩達はやっているの?

…もしも先輩達が怪我をしたら…って考えると、怖くなる。


「もう着くからねー」


僕が青褪めている内に、車はギャラリーコーナーという所に到着したらしい。

窓越しに見てみると、道が物凄く深いカーブになっている場所だった。

スリップしてしまった時の事を考えてなのか、カーブの外側に当たる部分に広く避難帯が設けられている。

僕達がいるのは、まさにその場所。

避難帯の中に車を止めて、これから上がってくる車の走りをここで見るらしい。


「純くん、ありがとう~」

「いえいえどういたしまして!また戻る時は声かけて下さい」

「ありがとうございました」


外に出る際、僕もその人に頭を下げると、運転席から振り返った彼はにっこりと微笑んでくれた。







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