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総さんの姿を後ろから見て「いいなぁ…」なんて羨んでいると、名波先輩は総さんの言葉を聞いて小さく笑い声をこぼした。


「葵ちゃんの事だから、免許も持ってないのにどうして?とか思ってるんだろ?」


まさに図星。

コクコクと頷いたら、総さんにまで笑われてしまった。


「耀平も松浦も中学の時から走ってるからな。…元々ずば抜けてドライビングセンスも良かったし、四年半たった今じゃ松尾山の帝王だ」

「…中学って…」


唖然とした僕の反応は間違ってないよね?

それっておかしいよね?


「ちなみに、耀平と松浦じゃ走りの種類が違ってるから、それぞれの帝王だな」

「………?」


走りの種類が違う?

またも首を傾げた僕の姿に、名波先輩は小さく頷いた。


「俺はドリフト。エンはグリップ」

「………」


意味がわかりません。

頭の中が疑問符だらけになる。


そんな話をしている内に、どうやら車は松尾山の一番上に着いたようで、サービスエリアのような駐車場に入った。

黒っぽいフイルムが貼られた窓越しに見る駐車場は、一種異様な光景となっていた。

とにかく一般車がいない。

どれもこれも走り屋らしき車だ。


みんな車の外に出ていて、仲間同士で話をしている人達もいれば、ボンネットを開けて何か作業をしている人もいる。

中には、ジャッキで車を持ち上げてタイヤ交換をしている人もいたりして…。

ちなみに、どれもこれも物凄く排気音がうるさい。

…と思ったら…。

あれ?

先輩の車、うるさくない。


「あの、先輩」

「ん?どうした?」

「他の車は凄い音がするのに、先輩の車ってあぁいう音がしませんよね?」

「あぁ、これもマフラー変えてるけど、サイレンサー付きのやつだからな。爆音はない」

「…色んな種類があるんですね…」


本当に僕の知らない世界だ。

感心していると、隣の駐車スペースに誰かの車が止まった。

見てみれば、赤の34GTR。松浦先輩の車だ。


総さんが運転席から降りてそっちへ向かうと、松浦先輩の車の運転席からも誰かが降りてきた。

窓ガラス越しの目の前に現れたその人は、夜目にも鮮やかな真っ赤な髪をしている。

この人が加瀬成美さんなんだろう。

短髪をツンツンに立たせているせいか、ちょっとだけ怖い感じ。


二台のGTRの前に総さんと加瀬さんが並び立つと、駐車場にいた人達がみんなこっちを見た。


「葵ちゃんはまだ中に乗ってて」

「はい」


そう言って名波先輩が助手席から降りて前に居る二人の横に並び、更には隣から松浦先輩も出てくると、それまで作業していた人達までもが手を止め、見事にその場にいる全員の視線が集まった。

総さんが言っていた“神”や“帝王”という言葉が嘘じゃないとわかる光景。


四人で何か話しているのをボーっと見ていたら、不意に松浦先輩がこっちを振り返った。

フイルム越しとはいえ、それなりに透けて見える為バッチリと目が合う。

驚いて瞬きする僕を見た松浦先輩は、それまで無表情だった顔に満面の笑みを浮かべて歩み寄ってきた。







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