86 決別
86 決別
友浩は一切の躊躇なくアリスの首を落とそうと横に剣をスライドさせる。アリスは剣を引き抜き回避にまわった。恭悟は傷を塞ごうと意識を集中する。
「!」
傷は一向に塞がらずただ血が流れていた。アリスが意地の悪い笑みを浮かべる。
「永遠に縛られたその躯を壊せる新しい魔剣さ。お前ら二人のためだけにうった、な」
恭悟が表情だけで問う。
何故?
「不本意だったのさ、あの実験は。仕方があるまい、多少の苦労は覚悟してつくったがあまりに時間がかかりすぎてな。どうだ、死ぬか?」
アリスの言葉はあまりに唐突だった。二人の思考が停止する。
「アリス・ミョルニルにとっては簡単だよ。それともあれか?…いきる理由でも見付けたか?」
返答はない。
「ならば高みの見物といこうか」
アリスは静かにその場から消える。放心状態におかれ二人は動けなかった。
淋はまず海斗の右手を奪うためフェイントを入れつつ日本刀を振るう。対して海斗は一切のフェイントにかからず陸斗の首を狙った。陸斗は防御を最優先に後方支援に重点をおく。即席の組み合わせなだけに歪で完璧な連携とは言うことが出来ず押されつつあった。それは例えば斬撃。海斗と淋では元々の筋力がちがう。どんなに鍛えようと淋は海斗の筋力には勝てない。そして例えば速度。防ぎにまわれば攻撃はおくれをとる。そして例えば情。どうにも感情が邪魔をする。
「く…」
日本刀を強く弾かれ微かに声を漏らす淋。迫る刃に絶対的な防御をとるため叫ぶ。
「盾!」
淡い光の幕が淋と海斗の間にはられると同時、海斗の動きが止まった。
「死んでいた期間は腕がにぶったと思ったんだがな。それとも君の使い方が悪いだけか?煉獄姫」
薄い笑みに挑発。アリスは何かを海斗の耳元で囁き海斗はその場にくずれおちた。
「心配しなくていい。眠らせただけさ」
アリスは言い、地面に落ちた剣を拾った。そして、餞別とでもいうように淋の盾を破り斬りつけた。血しぶきがとびくずれおちる。さらにアリスは陸斗の首を撥ねた。
一条の面影など一切感じられないその化け物は身に付けた刃を高速で走らせ全てを切り裂く。
「侑士!覚醒された。リフと碧人を動かして」
莉磨は叫ぶように指示をだし大剣をふるうと同時次について思考を巡らせる。まずは戦場の確認。どうにも動ける人間と動けない人間の差が大きい。
― 竹内陸斗は死んだ。海斗と淋は失神。刹那は覚醒間近。
莉磨の指示だしは一条の攻撃速度に追い付けず各自が各々の動きをするしかない。要するに司令塔は働きのない飾り状態。
― 冗談じゃないわ。こんなの無茶苦茶よ。
一条の刃の速度についていけず傷をおっていくまわり。莉磨は一度後方へとさがり体勢をたて直した。
― 刹那は後回しね。
まずは目の前のことを最優先に反撃を開始した。