85 裏切りⅣ
85 裏切りⅣ
銀色に光る刃が弧を画き首筋へとめり込む。
― クソ…。
躯は決して反応してくれずただ死を覚悟した。
「少し早すぎです」
淋は呟き日本刀で刃を受けとめる。思っていたよりも重い斬撃に微かな傷みを感じた。
「あのヒトにとりつかれているだけ、と言うことは恐らくアリスの魔剣による肉体支配。私の記憶にはそんな刀ありません」
淋は海斗を押し返し体勢をととのえる。
「莉磨に確認をとろうと思ったのですがどうやら忙しそうなので自己判断で行きます。
一条元陸番隊長により蘇らせられし罪人・アリスが何らかのかたちで新たな刀をつくりそれを使い竹内海斗を一度殺害。盗み見した報告書によると刀の名前は「何度も殺す」。能力としてはあくまで予想ですが一度殺した者を操るもの、もしくは息の根はとめず急所に楔をつけ操るもの。そして死から連想され繋がる何かが刀を操る術であり竹内海斗を助けることにも繋がると思います。最も、殺すのが手っ取り早いのですが」
淋は人形じみた口調で陸斗を見ずにただ淡々と告げた。陸斗が忌々しそうに舌打ちし剣を構える。
「操る術ってなんなんだよ。わかりやすくいうと?」
「要するに言魂です。一般的には刀の能力に繋がる短い言葉と刀のホントの名前で構成されています」
淋は向かってくる海斗の攻撃を避け更に続ける。
「考えられる名前の数はかなりあり恐らく短時間で試していくのは無理があります。運にかけて試してみるか、」
淋は日本刀を振るい海斗の剣を弾く。そのまま数歩後ろにさがり体勢を整えた。海斗は標的をかえ陸斗へと向かう。
「手足をもぎとって本部で試すかです」
淋は酷く冷たい口調で告げた。
薄く透明な刃が貴哉の四肢へと突き刺さる。
「何故あの日…あんなことをしたのですか?」
刹那は問う。貴哉は目をそらすことも答えることもない。
薄く透明な刃が一回り大きくなった。
「ぐ……」
無理矢理に広げられた四肢の傷から痛みがはしり声がもれる。
「元々向こう側の人間だからさ」
荒れた息で額に汗を滲ませ貴哉は答えた。刹那の表情が一瞬乱れる。
「兄ならどっかにいるだろうよ」
貴哉は薄くわらい無理矢理に四肢をひきちぎり距離をとる。流れでる紅の血は多量で肉と共に白のような黄色のような脂肪がところどころ広がる。
「四肢を捨てた!?」
目前に広がる血溜りに無理矢理にひきちぎられ切断面の捻られた四肢を見て刹那の瞳の色が、変わった。
「あ…」
刹那は小さなうめき声をあげた。身体中の血が勢いよくざわめき始める。刹那は自分の躯を押さえ付けるように力を加えた。無意味とでもいうようにいくつもの荊がはえ貴哉へと向かっていく。再生途中の貴哉は動けず荊に縛り上げられた。血が滲み激痛と共に吐血する。一切の抵抗はなく息の根が止まった。