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風に吹かれて  作者: lima
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memory9 恭悟

memory9 恭悟


「村中さーん」

力の限り叫びこちらへと手を大きく振りながら走ってくるのは由哉で恭悟はあまり歓迎していなかった。どこへいってもひょこひよこと探し出してくるのだ。鬱陶しいったらありゃしない、と言うのが本心だった。ただ、口に出すことはなく表情にでることもない。しかしやめてほしいとは思う。仮にも由哉は天瀬家の出であり恭悟はただの人間に等しいのだから。

「何のご用ですか、天瀬さん」

恭悟は淡々とした口調で問うた。

「とくに何もないです。あと僕のことは気軽によんで敬語は使わないでくださいっていったじゃないですか」

なんて、呑気な答えがかえってきた。恭悟は飽きれ半分諦め半分に移動するのをやめその場で昼食をとる。隣には由哉が笑顔で同じように食べ始めていた。

「なんで俺につきまとうんすか」

恭悟は素朴な疑問を由哉にぶつけた。どうせまともな答えなどかえってこないだろうなと思いつつも問うてしまう。

「そりゃ気になるからですよ。村中さんを知りたいから追い掛けるんです」

思っていたよりはまともな答えであったが恭悟にはよく意味がわからなかった。

「きっと気が合うと思うんです。やりたいことも本職も副職も同じでチームも隊も一緒なんですから」

由哉は付け足した。恭悟はあまり納得できなかったがまぁいいかと諦める。どうせすぐ飽きるだろうと。


「村中さーん」

力の限り叫びこちらへと手を大きく振りながら走ってくるのは由哉で恭悟はすでに昼食を食べ始めていた。由哉は隣にすわり笑顔を見せた。

「村中さん、飲み物忘れてる」

由哉はそういい、恭悟へと手渡す。恭悟は正直驚いた。忘れていたのを届けに来たことも、わざわざ恭悟の好みのものを渡してきたからだ。

「好きですよね?村中さん」

一度も言った事はないし常に飲むものはランダムだった。なのに見抜いてきた。なによりもうすぐ一年がたつのにお互いのことを話すこともほとんどないのにいまだ一度もかかしたことがない二人での食事。凄いと思えた。逃げる場所も逃げ方も隠れ方も全部由哉は追い掛けて同じようにしてきた。なぜそこまで興味を持たれるのかはいまだわからない。

「ああ、ヨシくん。恭悟でいい」

恭悟はそのとき初めて敬語を崩し皆が呼ぶ名でよんだ。由哉が驚きのあとに喜びの笑顔を浮かべたのがはっきりと伝わってきた。

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