83 裏切りⅡ
83 裏切りⅡ
ソファーに座り出された紅茶に砂糖とミルクを溶かす。ゆっくりとかきまぜスプーンをおき、夏輝は鳥刈に向かった。
「そんなに不審そうにみないで下さいよ。まぁ最も、鳥刈さんの不安は当たりですが」
「?」
夏輝の薄い笑みに鳥刈は目を細める。
そしてそれは、唐突だった。
警報が作動しなり響く。反射的に鳥刈が立ち上がる。
「行動早いなぁ。あの二人がいなくて助かったかな」
「!」
夏輝が立ち上がった事により鳥刈はとっさに拳銃を取り出し夏輝へと向ける。
「平山を解放したんだ。潰しに来るに決まっているだろ」
夏輝は告げた。鳥刈が発砲する。夏輝は身をそらし弾丸を避けた。しかし頬をかすり赤い線が出来る。夏輝から笑みが消え鳥刈は舌打ちする。夏輝が一歩で間合いをつめ左手で拳銃を押さえる。鳥刈は左手にナイフを持ち夏輝へと振り下ろした。夏輝は右手でナイフを落とさせ左手で鳥刈から拳銃を奪う。
「現場をおりたオマエに勝ち目なんかないね」
そして、発砲。鳥刈がその場に崩れ落ちる。夏輝は構えを崩しふっと笑った。
剣をとり振るうのは何年ぶりだろうか。隠居をしてそれなりにたっているが相手にひけをとることはない。大剣を大きく振り上げ倒れる敵に一瞥もくれない。充満する血の香りは鼻孔をくすぐり懐かしさを感じさせた。
「こんなもんか?」
警報がなりだし人が集まる。取り囲まれ刃が向けられた。
「早見篤史…な」
言い終わるより先にその首を落とす。動き出すもの全てを切り裂き道を開く。歩きだし、すれちがう全てを大剣は貫いた。
高速の光が走り莉磨へと向かう。
「させません」
刹那の声と同時、光が消失する。貴哉の表情に変化はない。
「ここは私が」
刹那は力強く頷き莉磨をうながした。莉磨は無反応のまま一条へと大剣を向け攻撃をしかける。それを合図とするかのように恭悟が飛び出しアリスの首をはねやすい体勢へと変わる。透かさず友浩と慎吾が逃げ道を塞いだ。
「そこそこだな」
アリスはふっと鼻で笑いマントをぬぎすてる。一瞬みえた動揺を見逃さずつけいるすきとしまずは慎吾を振り払う。
「おてなみ拝見といこうか、実験体」
「!」
アリスの薄い笑みに対し恭悟と友浩の表情は怒りと恐怖、絶望と希望など様々な色合いを見せていた。
刹那はその目で捉え、まるで絵を描くかの如く呪術を発動していく。
「くっ…」
攻撃を防ぎきれなくなり貴哉から声がもれる。印を切る時間も呪操具を取り出す隙も与えてくれない。
「貴方ごときに負けるわけがありません。これでも一応、5席ですから」
刹那は呟き、貴哉を地面へとたたき付けた。
「拷問/縛り/痛み」
薄く透明な刃が貴哉の四肢へと突き刺さり微かな血臭をただよわせた。