77 未練
77 未練
一条がひどく愉しそうに笑みを浮かべた。つられるようにアリスも笑うが、深くフードを被ってしまう。
「楽しいゲームを始めようか」
一条が新しいコマを放った。淋が動きをとめ敵を待つ。来るのは二人。
渉とゆかりだ。
莉磨は拳銃を片手で構える。向かってくるのは歴代戦士。加減はしない。全て撃ち殺す。弾がなくなってはつめかえ撃つ。弾がなくなってはつめかえ撃つ。それを無表情のままに続けた。たとえそれがみしった顔だろうと躊躇なく撃ち殺す。迷いはなかった。
「流石…かな」
一条の呟きに莉磨が舌打ちする。
「よくもまぁ死体をためこんだよ」
莉磨は皮肉をこめて言った。
「先輩……」
みしった声に莉磨は一瞬銃口が揺らいだ。それでも躊躇なく撃ち殺す。
「じゃぁ……これは?」
莉磨の目の前に白石だけが迫る。莉磨は振られた刃をよけ拳銃を捨てた。愛刀である大剣をつくりだし下から上へ振るう。強く弾かれお互いに距離をとった。
「くっ……」
大剣を構える隙もなく日本刀が迫ってくる。半歩身を引くも頬をかすり血が伝った。白石の表情がゆれたのを莉磨は見逃さない。大剣を振り上げ弾き腕の力だけで白石の首を狙った。
二人が同時に、地を蹴った。敬士は大剣をつきだし避けられ横へと振るう。腕をかするも斬った感触はなく一歩下がった。友浩は大剣を斜め下から上へ振るい微かに手応えがあるも大した傷ではない。そのまま真下へ振るい更に横へ展開した。
「微妙だな」
ふとお互いに構えかたを変える。表情がかわり本気を出す準備。月光に冷たく刃を光らせた。
狂喜的な笑みを浮かべ向かうのは元5席。雰囲気からして他とは違った。圧倒的な強さを誇るような、強気な気配を持っている。
広大はその長い刀身を持つ日本刀を、シリウスを、完全に引き抜き大きく振るった。まずは横に。次は斜めから。火花が散り風切り音がうるさい。少しだけ、5席の方が剣速は速く広大の左肩をかすった。広大はシリウスを一度鞘にしまい、姿勢を低くする。顔をふせ足音と共に顔をあげる。鋭い視線を向け、向かってくる5席が間合いに入ったその瞬間に振り抜く。
居合い。
5席は崩れ落ちた。鮮血を流し胴から二つにわかれて。
広大は静かに立ち上がった。目にはまだ、鋭さが残っている。覚悟の色が滲出た瞳は一瞬にして快楽の笑みへと変わった。