74 再戦Ⅱ
74 再戦Ⅱ
雰囲気は険悪だった。莉磨はそうなることをわかっていて集めた。
「うん。抜けてもらって構わないよ」
全員が集まったことを確認したあと、一言目はこれだった。反応は人各々なものの大半がわかっていたような表情だった。
「前回のは完全に失態。私が悪かったと思ってる。だって簡単にかわってしまう未来を視ようとしてなかったんだもの。……もう一度言う。ここから先は本当に信じないで。抜けたいなら抜けて構わない」
誰も動かなかった。莉磨は慎吾を刹那を広大を、竜一を敬士を友浩を、憲を碧人を淋を隼斗を、裕斗を恭悟を瞬哉を侑士を見て溜め息をつく。捺輝とリフとロイは、敢えてみなかった。
「何期待したのかわかんないけどみんな同じ思いだと思うよ」
恭悟は無表情に呟くように言う。
「うん。なら、作戦をたてるよ。持っている情報を全部だして」
莉磨は笑みを浮かべる。
「昨日なんだけど、ティルが…」
「わかってる。白石さんが敵なんでしょ?みえたよ」
慎吾が半歩身をひいた。
「昨日の状況からいって平山さんの見張りは継続されていて瀬田玲音が今もと考えるのが自然だろうね。
一条さん達が動くのはいつかわからない。作戦としてはいくつかの班を作って動く。
広大、竜一。常に拠点にいること。情報を収集して。
捺輝、ロイ、裕斗。竜一の情報を元に朝から昼まで探索。
刹那、慎吾、侑士。同様に昼から夕方まで探索。
隼斗、淋、瞬哉。同様に夕方から夜にかけての探索。
憲、恭悟。同様に深夜から早朝にかけて探索。
リフ、碧斗。救護班として拠点待機。
敬士、友浩。いつも通りの生活をしつつまわりに神経を張り巡らせて。
進展があったら報告を」
誰もが頷いた。
淋は部屋を出て夏輝の部屋へと向かう。時間が時間なので学校に行っている可能性もあるが震えるてで扉をノックした。
「どーぞ」
軽い口調で返事がかえってきて、淋はそっと扉を開ける。特になんも家具のないすっきりとした部屋の中で夏輝は床に座っていた。淋は扉をとじる。
「無防備だね。何しにき………」
夏輝の軽口の途中で淋は頬をひっぱたいた。
「ゆかりにメールを送るなんて……。なんでそんなことをしたんですか!?」
淋は思わず怒鳴っていた。夏輝から表情が消える。
「任務にはトラブルがつきものなんだよ。それに呼び出しをかけたんじゃないさ。近付くなって送ったんだよ」
「人間の心理を把握しあえてそう送ったんでしょう!?」
淋の言葉に夏輝は鼻で笑った。
「人払いの陣に穴があったのは自分のせいだろ。人に責任押し付けんな。それにどうした?やけに感情的だな」
淋は拳を握り締めるもすぐにへたりこみ肩の力を抜く。
「自分でも……わかんないんです」
淋は小声で言った。夏輝は何もない天井を見上げ呟く。
「認めちまえるお前が羨ましいよ」