72 真実と戦Ⅲ
72 真実と戦Ⅲ
走り抜けた一条を横目に少女は溜め息をついた。
「初めましてになるのかしら。私は梨磨よ。ソラトからはティルとかって呼ばれてる。そちら側にもいるんでしょう?莉磨ってやつ」
「ああ、いる」
梨磨の問いに答えたのは瀬田だった。
「そう、だったらティルってよんでくれてかまわないわ。混ざるでしょう?」
「そうだな」
梨磨は、ティルは敵対の意思を見せるような声色でいう。刹那と慎吾は警戒しつつ話を進めようとした。
「なんで…こんなところに」
「そんなもの、ソラトにいわれたからに決まってるじゃない。面倒になる相手だから殺ってくれって」
ふん、と鼻で笑い腕を組む。
「面倒になる?」
「そうよ。具体的な内容は言わないけど…そうね、架聖莉磨に伝えなさい。ソラトからの伝言だと思って……」
ティルから発せられた言葉に刹那は動揺を隠すことが出来なかった。
BGMが聞こえるほど静かな中、莉磨は平然と説明を続ける。
「各家の子供が生き残ったのは、血を絶やしてはならないという教えを幼い頃からされていたから、兄達が戻ってすぐ復帰したのは誰かが故意に空席の座をつくりあげたから」
「故意に開けた理由は白石水輝が身分に関係なく接することを知ったからってとこか?」
篤史が口をはさんだ。
「うん。でなければ最初から最後まで呼び捨てなんて出来ないよ。一条さんだって最初から呼び捨てだったわけじゃない」
「身分制度が嫌だったんだろう。昔なにかをされて嫌な思いをして『クリスマスの逆襲』を思い付いたってわけだ」
篤史が付け足すように言う。捺輝は参ったなというような表情を見せ二人をみる。篤史の眼鏡が光を反射した。
「復讐する?」
「いつかね。今は利用しとく」
莉磨は捺輝の問いにうっすらと笑みを浮かべはっきりと答えた。その様子を見て篤史が鼻で笑う。同時に立ち上がり会計へ向かった。
全身に黒を纏ったそれらは静かにTB中学へと忍び寄った。
死体処理班。
殆んどのものが知らない極秘の部隊で主にディセント達が仕事を終えたあとの後処理をしている。
死体処理班はまず校庭にある細間切れのものを黙々と片付け始めた。破片一つ残さず全てを黒い袋に入れ燃やし別の袋に入れる。地面を微かに熱し飛び散った血などを拭き取り体育館へ向かう。
「最後の仕事だ」
部隊長がいい体育館に入るも死体は無かった。おびただしい血を残し誰も居ない。
「血を片付けて報告だ」
部隊長の言葉に頷き各自仕事を進めた。