71 真実と戦Ⅱ
71 真実と戦Ⅱ
「俺が実行した」
しりすぎているその声に困惑した。
「捺輝…」
「経緯を説明しようか」
捺輝は莉磨のとなりにすわり無表情でたんたんと話始める。
「昔に『クリスマスの逆襲』という白石水輝が冗談半分でたてた計画書を見付けてさ、少し面白そうだから適当な人材を揃えて実行してみたわけ。勿論、自分の親も莉磨の家族も一つの駒だよ。想定外だったのは、白石さんに気付かれたことで他は何もない。親は最初から捨ててたし敬紀、由紀、詩織の三人は最初からある程度の傷をおわせ別地で治療する予定だったし…」
うっすらと微笑みを浮かべる捺輝。
「さすがにキツイかな。ある程度予想はしてたけどさ…」
莉磨は苦笑をもらした。今度は捺輝が大さた変化はないものの微かな驚きの表情を見せる。
「何故各家の子供が生き残ったのか、兄達が戻ってきたとき何故すぐに隊長として働いたのかを考えればわかるよ」
お互いにお互いのカードを見せあうように淡々と語った。
淋は皮肉混じりの声でゆかりの名を呼ぶ。驚きと困惑をまじえた表情を見せる渉。
淋は一瞬の隙を見逃さなかった。
掌に小さな呪術陣を展開させ渉に駆け寄る。そしてたった一言をさけんだ。
「空!」
渉の脇腹は吹っ飛んだ。呪術陣と同じ大きさの穴が躯にあき勢いにバランスが崩れ倒れこむ。本能的に半歩下がり荒れた息で、血をながし死を確信した瞳をする渉を淋は見下ろす。
「人形か…」
渉は精一杯の殺気を籠めて呟く。
「私情より仕事か……?」
淋は無言で立ち尽くす。飛び散った血が頬についているものの他はなんともなかった。
ゆかりは何も出来なかった。近寄ることも逃げることも、呼吸すら忘れていた。
「な……んで……?」
辛うじてでたかすれる声に淋は反応し視線を向ける。息が整い生気も意思もない虚ろな瞳。
「仕事ですから」
他人行儀に告げた。ゆかりがその場に力無く座り込む。不意に聞こえた足音に淋は目線を変えた。
「ごめん。終わった」
見えるのはエメラルドグリーンの瞳となにも考えてなさそうな童顔。憲だ。
「お疲れ様です。こちらも終了しました。桜木ルナへのコンタクトを開始します」
淋は漆黒の携帯電話をとりだし電話をかけた。単純な報告をし一方的に電話をきる。「帰りましょう」と憲を促し歩き出す。へたりこむゆかりも死にきれていない渉も置いて。
あたりに光が散る。
眩しいくらいの光が一瞬にして広がり消えた。刹那と慎吾は反射的にもっとも光の強かった後ろをみる。刹那のはった結界は吹き飛び地面には血に染まる久保。そのとなりになんともない平山。
「あ~あ、やっちゃった」
一条がふざけたような声で言う。
「すいません、私のミスです」
刹那の声が微かに震えていた。
「危険分子として拘束する」
冷たい低い声が響き平山が地面におさえつけられた。
「瀬田くん!?」
「嘘……守りについたってきいたのに…」
慎吾と刹那は思い思いにのべ完全に動きが止まっていた。
「やっかいかな」
一条が逃げようとふりかえった。
「無駄よ」
一条にたちふさがった金髪の少女。金髪の一部が一条へと向かいくるりとまわされた。一条はうまく避けるも左腕が落ちる。叫ぶことなく走り抜けた。