68 緊急の戦
68 緊急の次戦
沈黙が支配していた。
重苦しい陸番隊舎の集会室は沈黙に支配され耳鳴りがはっきりときこえる。正面には拓也が大剣を壁にたてかけ無表情に見張りを続けていた。
「学校か…」
ケータイを握りしめ渉は呟く。窓と拓也をみくらべ歯をくいしばる。
― 一か八か……。
渉は握りしめたケータイを拓也へとちからの限り投げつける。拓也の動きが一瞬乱れ渉は窓を突き破り外へとでた。
静かに風は吹いた。木々をしならせ髪をなびかす。
「おまちかねみたいだ」
そこはよく知った場所だった。月光に照らされる白い建物。
「学校……」
校舎内に誰もいないのか暗い。淋はゆっくりとまばたきし一本の大剣をつくりだした。
投げつけられたケータイを手にとり拓也は溜め息をつく。まさかこんなものに惑わされるとはと思いつつも片手で冷たく報告書を打つ。漆黒のケータイは光をともしずらずらと暗号化された言葉を並べていた。
「かして」
渉のケータイを不意にとらるがきにすることなく拓也は報告書をまとめあげる。宛先は四つ。莉磨と収集室と淋、それからソラトに。
淋はつくりだした大剣を憲に渡し憲はただ無言で受けとる。一瞬の驚きのあと表情はない。いつも通りの何も考えていないような頼りなさそうな顔付きだ。
「趣味が悪いですね。ここなんて」
淋は冷たく東野に向けて言う。自分でもわかるほど声がふるえていた。それは武者震いではなくたんなる恐怖からで隠密起動隊員であるはずなのに圧倒的な存在感を放っていた。
「……」
返ってくるのは無言で静かに大剣が引き抜かれる。一瞬で目の前から姿が消えぷつりと音がきこえそうなぐらいに存在が完全に失せる。吹いた風と共に耳元で冷たい金属音が響き淋が気付けば首筋にあてられた大剣が大剣によっておさえられていた。
「あ…」
思わず小さく声がもれたものの静寂がその場を支配し戦闘ははじまっていた。
「呪術陣を展開させ人払いを」
鋭い金属音と共に憲の声。淋は無表情になり頷く。
「了解しました」
一言いって走り出す。学校全体を包むために必要な大きさや規模を計算しながら。
「煉獄姫か…」
東野がうっすらと呟きお互いに剣をはじきだす。素早い剣の振りに風が舞い風切り音が高く長く響く。
「わからん…君が何故5席に……殺しにいるのかわからない。隊長格には劣る剣技だし」
「なんでだろうね」
東野の言葉をさえぎり憲は大きく大剣をふるった。