66 緊張と安心Ⅴ
66 緊張と安心Ⅴ
空が暗い。
夏でも11時を過ぎれば空は星が輝く。まだ暑い日は続いているが夜風は少し冷たい。
「ほぉら、行くよ!」
久保に左肩を軽く叩かれ憲は歩きだす。何でこんなことになったんだかと考えながらも。
「なにも考えないことを勧める。あのひとはいつもそうなんだ」
となりに広大がならび苦笑しながらも憲に声をかける。片手には缶コーヒーを持ち一気に飲み干す。
「なにがですか?」
憲が問うと広大は空き缶をゴミ箱へと投げ捨て困ったような表情を見せた。
「全部しってるからなんだろうけどさ。こっちを気遣ってんのか素なのかわかんねぇんだ」
憲は笑みが溢れる。広大がこんな表情和見せるなんて知らなかった、そんな思考を持つ自分に自分に何故か笑えた。自分は仲間殺しをするし大量虐殺する狂人であるはずなのに。
「お、笑った。表情があって何よりだ」
それだけいって広大は少しペースをあげる。あっというまに引き離され声は届かないであろう。しかし言う。
「それはあなたも同じでしょう」
いつそこにいたのか、淋と声がかさなった。可愛らしいワンピース姿の淋は微笑む。
「話すのは初めてですかね」
「さぁ」
憲は曖昧に応えた。人と付き合うのは苦手分野だ。そんなこと教えられなかったしいつか殺すかもしれないのだから。
「どうして…ここに?」
普段ならばしないだろう自分から問いを投げ掛ける。
「久保さんがおいでって。パパは……篤史は隼斗と用事があるみたいで」
「ふーん」
憲は自分がきいたくせにそっけなく返す。いや返し方がわからなかった。
「刹那さんもむこうとくるみたいですよ」
「むこうって?」
「別チームの人です」
そのままなんとなく二人並んで歩く。はなすこともなく無言で。
背中に激痛が走る。シャワーを浴びると血が流れ落ちていく。
「クソッ…何が少しだ。激痛じゃねーか」
壁に手をつき体重を預けるように立つ。髪から水が滴りときに頬をつたう。苦痛からか眉間にしわを寄せほんの少し息は弾んでいた。
ごく普通の飲食店で落ち合う。
―うん、最悪なメンバーではないかな。
などと考える。というより冷静に分析してしまう。メンバーは久保、憲、広大、淋。それから慎吾、刹那、由哉、おまけなのか由哉の弟・貴哉の8人。
では終らずいつきたのか、矢野と平山もいた。
―慎吾さんがいなかったらなんか大変なことになってたかも。なんでこんな曲者ばっか…。
久保に誘われついていってしまったのが間違いだった気がすると今更思った。