65 緊張と安心Ⅳ
65 緊張と安心Ⅳ
花束を片手にある場所へと向かう。そこは広くて人目につかない殆んどの人が知らない場所。日が少し眩しくて目を細める。それでもはっきりと見える大剣や日本刀など武器の墓標。捺輝は一本の日本刀の前で止まる。花束をおき目を閉じた。唇を噛み締め空を見上げる。
「白石さん…」
無意識に呟いた。
収集室内は慌ただしく動いている。そこに由哉はいない。試合があるからと珍しくそっちを優先した。
「治療室に早川拓也、早見淋それ以外の妖気痕跡はありません」
ルナはキーボードを打つ手をとめ侑士に言う。隣では竜一が書類を見つつPCでデータ検索していた。
「おとなしゅうしとればええものを」
侑士は髪をかきあげ呟く。眼鏡の位置を直し眉間にしわを寄せた。
「第5席に緊急連絡をいれますか?」
ルナは問う。声が震えているのが自分ではっきりとわかる。
「まだええ。稲田が重要な書類を見つけたらや」
侑士の目つきが鋭くなる。ルナは軽く頷いた。
先程からずっと訓練していた。トレーニングルームの一室。そこはいけどりにした下級フォリンを指定した数だけ放たれるある一定の強さが無ければ使えない。
夏輝は冷たい銃口に見つめられながらだだひたすらフォリンを殺す。死んだフォリンの山の中で息をあらくし汗を流しながら素手で殺す。気管をもぎ取り蹴りをいれ着地し首を落とす。これで三体が死に機械音が鳴った。
「もういいか…」
呟き部屋を出る。血にまみれた手と顔を洗い着替える。すぐそばの椅子に倒れこむように寝そべり洗い息を整える。
「大丈夫ですか?」
いつからそこにいたのか、淋は夏輝の顔をのぞきこみ小さなその手は夏輝の頬に触れた。
「つめてぇ」
夏輝は呟き頬に触れる淋の手に自分の手を重ねる。
―お前が……本郷先輩を好きなのは知ってるさ……
淋は大蔵の言葉を思いだし頬を赤くする。思えばいつしったのだろうか。二人は知り合いだったのだろうかと考えた。
「大蔵が……なんか言ったのか?」
夏輝は手をはなし上体をおこす。
「いえ……別に…」
淋は顔をそらす。夏輝はただ、笑った。
「ただの後輩だよ。同じ中学なんだ。お前が一年のとき俺は三年だった」
懐かしそうに夏輝は言った。