61 後始末
61 後始末
「今回の戦闘で夏期入隊試験受験者四十一名中十二名が死亡。隊員達は席官だけで三十二名が死亡。二十名近くが重軽傷をおっています」
薄暗い部屋で緊急に行われた隊主会には二人分の席があいていた。
「隊長格の死亡は痛手やな」
侑士は珍しく眉間にしわをよせ呟く。
「次の隊長についてですが零番隊は紅夜捺輝、求番隊は天瀬由哉でどうでしょうか?」
「いや、由哉に隊長は無理がある」
「本人はいやがるだろうよ」
「それはあるな」
「せやったら俺が求番隊長やるわ。壱番隊は広大にまかせりゃええやろ」
「しかし…」
「隊長は名目上でええ、ホンマに指示出すんは由哉や」
それに数名は頷いた。
「紅夜捺輝も辞退するんじゃないか?」
「なら架聖莉磨に…」
「それも辞退しそうやけどな」
「二人に声かけてみればいいのでは?」
「どちらもOKしたら?」
「どっちもするってことはないだろ」
ながながと話し合いは続いている。
扉はいきおいよく開かれた。
「会議中に失礼します。白石総隊長の遺体が………消えました」
片膝をつき荒い息を押し殺し戦闘服をきた隊員は言う。
「追えないだろうね」
「ああ」
焦った様子はなく落ち着いた口調の隊長達。
「ついでだ。このまま解散しよう」
一人の言葉に賛同し隊長達は部屋を出た。
捺輝と莉磨は問われた。物凄く単純な言葉で今後を左右するであろう問い。
「どちらが隊長になるか」
莉磨と捺輝はお互いをみあい言葉を交さず決断する。
「お断りします。僕にはふさわしくない位だからね」
捺輝はうっすらと笑みを浮かべる。
「私でよければ引き受けます」
対照的に莉磨は無表情のまま答えた。求番隊員はこくりと頷きその場を去る。莉磨からは大きくため息がもれた。
陸番隊長は― 一条拓麻は、私服に大剣を背負い部屋を、本部をぬけだす。
「莉磨ぐらいにはいえばよかったかな」
青空の下で生暖かい空気を肺に染み込ませる。予想以上に気持悪くて一気にはきだした。
強い日差しはじりじりと照り付け肌を焦がす。
「悪い事したなぁ。ホント」
「ついていきますよ。どこでも」
そう言ったのは斜め後ろに立つ陸番副隊長である東野真一だ。二人はいつも通りの微笑みを浮かべ走り出す。出来るだけ気配を殺し出来るだけ遠くへ。