memory6 捺輝
memory6 捺輝
血の海が広がる中小さく微笑んだ。この状況が楽しくて愉しくて仕方がない。殺しは快楽でしかなかった。
「悠聖!」
頬に血をつけ微笑む少年―悠聖は名を呼ばれ振り返った。
「莉磨……名前は変わったよ。たった今」
「捺輝……」
何とも言えぬ表情をする少女―莉磨。
「クリスマスの逆襲は終わった」
悠聖は―捺輝は呟くように言う。
「捺輝……」
捺輝の手には血をすった日本刀。ポタポタと血は落ちる。
「止め……さす?」
捺輝はあくまで明るい声で問う。莉磨は静かに首をふることしか出来ない。鉄の香りは部屋に溢れ莉磨を咳き込ませる。捺輝は咳の音がとまるのを待つ。莉磨の呼吸音が落ち着き話始めた。
「もうやめるよ。だから……」
「戦力を集めて潰す。わたしはそうしたい」
莉磨は捺輝の言葉を遮った。捺輝は無表情になり頷く。
「組織もシエルもソラトも全部潰す」
捺輝は言う。今度は莉磨が頷いた。
「約束」
莉磨が短く言い捺輝は頷く。
「忘れてない。これは手始め」
捺輝は無表情だが声は微かに笑っていた。
「次は組織に入る。今は八歳。二年後の十になる頃にはある程度の事が出来なくちゃ」
「そうだね」
莉磨の真面目な口調に合わせ返す。
春。
桜は舞い散り仄かに甘い香りを漂わせる。莉磨にも捺輝にも表情はなく義務のように桜を見上げていた。風が桜をさらい舞い上がる。髪止めのリボンが揺れほどけ舞い上がった。
「あっ」
莉磨はリボンへと手を伸ばす。莉磨の手は空を切りリボンは更に高く上がった。捺輝は背伸びをしリボンをとる。それを莉磨へと手渡した。
「ありがと」
受けとりもう片方のリボンもとる。それをポケットへとしまいこみ微かに微笑んだ。
「捺輝は三席か……きっと五席の方が合うのにね」
莉磨は小さく小さく呟く。捺輝は聞こえないフリをし広がる碧空を見上げた。風と共に雲は流れだしゆっくりと進んでいく。地の砂は一瞬遅れて舞い進んだ。
「陸番隊………最初から隠密なんてラッキーだよ」
捺輝は薄く唇を開き呟く。微かに笑みを浮かべて。