表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風に吹かれて  作者: lima
64/106

memory6 捺輝

memory6 捺輝


血の海が広がる中小さく微笑んだ。この状況が楽しくて愉しくて仕方がない。殺しは快楽でしかなかった。

「悠聖!」

頬に血をつけ微笑む少年―悠聖は名を呼ばれ振り返った。

「莉磨……名前は変わったよ。たった今」

「捺輝……」

何とも言えぬ表情をする少女―莉磨。

「クリスマスの逆襲は終わった」

悠聖は―捺輝は呟くように言う。

「捺輝……」

捺輝の手には血をすった日本刀。ポタポタと血は落ちる。

「止め……さす?」

捺輝はあくまで明るい声で問う。莉磨は静かに首をふることしか出来ない。鉄の香りは部屋に溢れ莉磨を咳き込ませる。捺輝は咳の音がとまるのを待つ。莉磨の呼吸音が落ち着き話始めた。

「もうやめるよ。だから……」

「戦力を集めて潰す。わたしはそうしたい」

莉磨は捺輝の言葉を遮った。捺輝は無表情になり頷く。

「組織もシエルもソラトも全部潰す」

捺輝は言う。今度は莉磨が頷いた。

「約束」

莉磨が短く言い捺輝は頷く。

「忘れてない。これは手始め」

捺輝は無表情だが声は微かに笑っていた。

「次は組織に入る。今は八歳。二年後の十になる頃にはある程度の事が出来なくちゃ」

「そうだね」

莉磨の真面目な口調に合わせ返す。


春。

桜は舞い散り仄かに甘い香りを漂わせる。莉磨にも捺輝にも表情はなく義務のように桜を見上げていた。風が桜をさらい舞い上がる。髪止めのリボンが揺れほどけ舞い上がった。

「あっ」

莉磨はリボンへと手を伸ばす。莉磨の手は空を切りリボンは更に高く上がった。捺輝は背伸びをしリボンをとる。それを莉磨へと手渡した。

「ありがと」

受けとりもう片方のリボンもとる。それをポケットへとしまいこみ微かに微笑んだ。

「捺輝は三席か……きっと五席の方が合うのにね」

莉磨は小さく小さく呟く。捺輝は聞こえないフリをし広がる碧空を見上げた。風と共に雲は流れだしゆっくりと進んでいく。地の砂は一瞬遅れて舞い進んだ。

「陸番隊………最初から隠密なんてラッキーだよ」

捺輝は薄く唇を開き呟く。微かに笑みを浮かべて。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ