57 トラブルⅡ
57 トラブルⅡ
恐ろしく美しく整った顔をした少女はたっていた。ただ隼斗を見て恐ろしく感情の読み取れぬ声で言う。
「押さえきれなくなったのね。今はこれしかない」
少女―莉磨は隼斗へと∮型のペンダントを投げつける。
「これが終わったら新しい訓練を始めるから」
莉磨は東門へと歩いた。
シエルは覚醒体で白石へと迫る。白石は海斗を抱え全ての攻撃を避けた。駆け付けた刹那へと海斗をわたし銀眼を輝かせ日本刀を抜く。
「切り伏せろ、銀嵐」
黒の強かった日本刀は銀色に輝き血を弾く。
「色褪せ、死、白昼夢」
刹那は小さく言魂を言う。白い刃は宙に浮き狙いを定めた。
大蔵は淋を強く押し退ける。淋はふらつき一瞬、視界が揺れた。何かは大蔵を貫き消しとぶ。大蔵はゆっくりとたおれ残った躯から内臓は溢れ出す。暗赤色と鮮やかすぎる赤は混ざりゆく。
「先輩!」
淋は駆け寄り治療を始めようとする。
「やめろ」
大蔵はかすれた声で言うが淋はやめない。
「無理だ」
「無理じゃない!」
淋は叫ぶように否定する。なかなか治療は進まず内臓は、血は流れ続ける。
「淋!!」
淋は初めて大蔵に名前で呼ばれ驚き治療が止まった。
「俺は……お前が」
大蔵は荒い息を押さえ最後のちからを振り絞る。
「お前が……本郷先輩好きなの知ってるさ……」
大蔵は血に染まった手をゆっくりと伸ばす。
「でも……す……き……た………」
伸ばした手は淋に届かない。落ちていく手を淋は手をとった。
「先輩が……先輩が死んでどうすんですか………死ぬなって言ったじゃないですか!」
涙が出ない。悲しくてさけんでも泣きたくても涙が出てこない。
「淋!」
隼斗は淋に駆け寄り大蔵だったモノから引き離した。
白い刃はシエルを貫く筈だった。攻撃はそれ地を大きく削る。
シエルが笑みを浮かべた。
「!」
シエルの複数の手は白石を貫いた。刹那は二人から距離をとり海斗を守るように位置する。莉磨が後ろからシエルに切りかかるが地に叩き付けられた。
「がッ!」
血が口から飛び出し音を立てて落ちる。刹那はその場から動くことが出来ずただ見ていることしか出来なかった。
「暴れスギ」
遥か昔に聞いた声。小さな少年はいた。