54 企みⅡ
54 企みⅡ
夏。
太陽はジリジリと照り付け汗を流させる。
比較的涼しい零番隊舎で莉磨や捺輝にかわり書類の整理を手伝う。今年の夏の試験、受験者は40人弱で過去最多となっていた。
「これ……」
受験者リストによく知った顔と名前が四つ。淋は信じたくなかった。
「白石隊長……」
「ん?あぁ、もう三日目に入ったぞ」
白石は夏の試験状況について問われたのかとおもい答える。淋の表情は険しくなる。
「……今日、夏祭りがあるらしい。行くか?」
白石は気晴らしにと淋を誘うが淋から返事はない。
「俺と行くのが嫌なら隼戦か誰かと行ってこい」
白石は淋から書類をとりあげ扉をさす。淋は困ったような顔をし隊長室を出た。
人が賑わう東地区の夏祭り。大蔵は高橋と共に人で溢れかえった道を歩く。風と共にすれちがう少女。
「はや…み?」
大蔵はすれちがう少女の腕をとり引きとめた。
「委員長!」
「早見!お前……」
人混みのなか、少女―淋とその隣を歩いていた少年―隼戦、高橋と大蔵の四人は立ち止まっていた。
「水あめ…買ってくるよ」
隼戦は淋に背を向け歩き出す。淋は返事をしない。重い空気と沈黙に高橋は耐えられずケータイの着信やメールを確認するが来ているわけもなくため息がもれる。
「………………急用思い出したわ」
ケータイをしまい一人歩き出す高橋。
「…何で、学校にこなくなった…?………何故、教えてくれなかった…?」
お互いに目をそらさず…いや、そらすことが出来ず強くにらみつける。
「連絡する必要性を感じなかったので」
淋はあくまで冷静に、無情な声で答える。
「何故、メールを返さない…?」
対照的に大蔵は強い感情をこめ言う。
「今は仕事用の物しか持ち歩きませんから」
「…何故、戦う…?」
「それが私の仕事ですから。……それより先輩は、なんでこちらがわにこようとするんですか?何故、試験を受けるんですか?」
「……」
大蔵は淋の問いに答えない。いや、答えられない。自分自身で答えがわからない。口を開くが声は出ず出たとしても花火にかきけされるだろう。花火は美しく夜空にかえりざく。
「死ぬなよ?」
大蔵は目をそらし言う。
「考えておきます」
淋は隼戦の歩いたさきへと進む。大蔵も半歩遅れて歩き出した。
家のインターホンがなる。外にはみしらぬ少年がスーツ姿で立っていた。
「でなくてもいいから伝えておくよ?君の兄は死んだ。組織が殺した。復讐する気があるならば明日の最終試験時に東門を開けてくれればいい」
人形のように整った顔をした少年は言う。
企みの笑みを浮かべ。